8-191 道場破りか!
大貝山の統べる地に蔓延っていた、悪い妖怪が消えた。耶万神による大祓で、きれいサッパリ。
海を越えて来たバケモノは生き残ったが、投げ捨てられた腰麻のアキを食らってゲッソリ、ヘロヘロ。
何が起きたのか、全く分からない。近くを通りかかった妖怪の話では、もの凄い臭いがしたと。直ぐに風上へ逃げ、雪に突っ込んだそうだ。
大石と加津の国守に、腰麻の祝。三妖の話をザックリ纏めると、こんな感じ。
他の妖怪とは違うバケモノが、耶万神による大祓に耐え、生き残った。蓄えていた力を失ったのだろう。禍禍しい闇のようなモノを、ヒシと感じる。
『長く居ると危ない』と思い、采に捨てようと連れて来たアキを、闇の力で投げ込んだ。
暫くすると食われたのか、アキの闇が消える。
それから直ぐ増えた。腹を膨らました鰒のような、傷を負った獣のような、ゾッとするような恐ろしい何かが。
大きく膨れ上がったソレは、滅びの時を迎える。
体の中に抱えていたのだろう。怨みか呪いか。強い何かが牙を剥き、弾ける。激しく燃え立つ火に包まれ、跡形も無く消え失せた。
「あのバケモノ。この地に入った時に調べたが、祝とも妖怪とも違う、底知れぬ何かを秘めて居った。」
「はい。使い熟せぬにも拘らず驕り、その身を滅ぼした。というトコロかと。」
「土。いや、良い。」
この感じ。『確かめに行きたいケド、行けないヨね』チラッ。ってヤツだ。
「大貝神。」
「言うな、土。」
御目を輝かせて、まぁ。楽しそうで何よりデス! 確かめに行かせましたよ、子蜘蛛を。そろそろ戻るでしょう。けれど、ココはビシッと。
「仰せのままに。」
お口、チャック。
「そうか。では気を付けて・・・・・・ん?」
「ん?」
「消えた。」
「動いた。」
嫌呂と悪鬼が見合い、揃って尾を抱える。
『わぁぁコレ、悪いヤツだ』と、心の中で大騒ぎ。コロコロ転がり気を静め、シュタッ。
「確かめに。」
「行きましょう。」
タッと駆け出し、耶万社へ。目指すは、タヤと念珠が残した大穴。
「頼もう。」
道場破りか!
「はいィィ?」
目の前に現れたのはナント! 采に調べに遣った子蜘蛛と、耶万の大穴を見張らせていた子蜘蛛の糸を、一纏めにして差し出すコンコンず。
後ろ足で立ち、モフン。
気の所為か子蜘蛛たち、とっても幸せそう。って、ソレどころではナイ。大蛇神の使い狐が揃って、大貝社へ。
首から下げられた札が、強く光って眩しい。というコトは。