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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
706/1585

8-190 若いサンタさん


山の中の雪道をそりでスイスイ。橇はミカ、帆はクベの闇で出来ている。ユキの力か、はたまた驚いたのか。しなやかに木がけ反っていた。






「ユキさん。食べ物、足りてるかい?」


「エッ。」


ミカに問われ、驚く。


腰麻こしまで思ったんだ。『皆、せてるな』と。」



妖怪になって初めて、腰麻に行った。昔はソコソコ賑やかで豊かだったのに、見る影も無い。そう思った。




人が少ないのは、連れ出されたから。田畑や家がボロボロなのは、耶万やまに荒らされたから。大人が痩せてるのは、子に食わせるから。なら、子が痩せてるのは?


耶万から届いたハズだ。アチコチから運ばれ、届けられた食べ物が。なのに無い。なぜ無い、なぜ飢える。



売っ払ったから? 違う。衣も家もボロボロ。食い尽くしたから? 違う。人だけじゃナイ、犬の骨も浮き出ていた。となると、考えられるのは一つ。


アレだ。




「国守だったアキだっけ? 死んだんだ。冬だから、頼るしか無いよ。」


「そうですね。」


思いつめた表情をして、ユキがポツリと呟いた。



耶万から多く運ばれた食べ物、バクバク食らったのか。もしかして種籾たねもみまで? イロイロ刈り取れたから、一袋なら渡せる。


イイは狩りより釣りが好きだし、何とか。



「悪いのは消えたんだ。社を通して耶万に頼むと良い。大袋一つなら、加津から届けるよ。」


ニコッ。


「大石からも一袋、届けます。」


ニコッ。


「ありがとうございます。お願いします。」


ユキが泣きながら、頭を下げた。






真っ直ぐ戻らず、大石に寄り道。橇に一袋ポンと乗せて、腰麻へ。


戻ったユキに駆け寄り皆、泣いて喜んだ。扱いに困っていたアキを討ち平らげ、生きて戻ってくれたのだから。



『良かったら皆さんで』と、クベが大袋を手渡した。ズッシリ重い袋を抱えおさ、号泣。アキを捕らえユキを戻し、食べ物まで分けてくれたのだ。


妖怪の国守の株、急上昇。



クベとミカは別れを告げ、一っ飛び。


しばらくするとミカが、二つの袋を持って戻る。大袋には米。小袋には干し肉と、干した魚や貝が入っていた。



腰麻は海から離れている。川を下れば海へ出るが、年寄りが多い。魚も貝も稀にしか口に出来ない。となれば・・・・・・大喜び!



和なら恵比寿えびすさま。洋なら、サンタ・クロースだネ。






加津に戻ったミカは、家に戻らず社へ。見聞きし、感じた全てを伝えるために。


あの禍禍まがまがしさ。大祓おおはらえを耐えるだけの何かを、隠し持っていたのだろう。



あれだけ離れても感じた。それだけ強い闇が、うねで渦巻いていたのだ。消えて無くなったが、また。そう考えると怖くて堪らない。




「ミカさん!」


イイが嬉しそうに駆けて来る。ミカはかがんで、両の手を広げた。


「おかえりなさい。」


胸に飛び込んできたイイを抱きしめ、ニッコリ。


「ただいま。」


みんなの幸せを守るために、努めなきゃな。


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