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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
705/1585

8-189 炎の中で


ボコッ、ボコボコ。


はじける』


ミシッ、ミシミシ。


『裂ける』


ピィィン。


『死ぬの』



私には重すぎた、欲張りすぎた。やっと手に入れた、化け王に対抗できる闇。あの時は思った。勝てる、勝ったと。


諜報員は裏で生きるモノ。表に出てはイケナイのに出た。出てしまった。



思えば、あの女。


相手を陥れてはイケマセン。言われて嫌な事は、言ってはイケマセン。されて嫌な事は、してはイケマセン。誰だったか、うんざりするホド叩きつけられた。



ハッ、これ私の記憶?


違うわ。えさの記憶に引っ張られるなんて、落ちたモノね。呆れるわ。シッカリしなさい、それでも諜報員なの。



あぁあ。この闇なかなかイケルけど、危ないわね。使命をまっとうするには何が必要。何を選んで、何を捨てる。迷って居る暇なんて無い。



・・・・・・私、何のために生まれてきたのかしら。愛されたかった。強く抱きしめられて、温もりを感じながら眠るの。



道具として育てられ、学んだわ。戦うためのアレコレ、殺すためのアレコレ、あざむくためのアレコレ、騙すためのアレコレ、操るためのアレコレ。


操る。誰を、どのように。違うわ。私は誰に、何を命じられた。ここに来たのはナゼ。こんな姿になったのに、なぜ誰も来ないの。外務卿はドコ。



捨てられるのね。使い捨てられるのよ、私たち。ねぇマリィ。マリィ、私を一人にしないで。お願いだから側にいて。一人で死ぬなんて嫌、耐えられない。


怖いコワイこわい。震えが止まらない。お母さん、お父さん。居たっけ? 私に身内なんて。捨て子、拾い子。もしかして、買ってきたトカ?



フッ、フフフ。あはは、愚かよねぇ。ずっと動く人形として利用されてきた。才は無いけど、似た力を生まれ持ったから、殺されず生き残った。


卿、なぜ私だったの。なぜマリィだったの。私たち、ココで死ぬのよ。最期の願いくらい叶えてよ。叶えてよぉぉ!



プックゥゥ。


『さよなら』


ミシミシミシィ。


『ありがとう』


キィィン。・・・・・・ボッ。



「ハハッ、ハハハ、ハハハハ、ハハハハハァ。」



紅蓮ぐれんの炎に包まれて、アンナとマリィは抱き合い、笑い続ける。その声は、泣いているようにも聞こえた。


親に愛された記憶も、撫でられた記憶も、優しく抱きしめられた記憶も持たず、苦しみながら死んでゆく。



人は皆、愛されるために生まれて来た。なのに、孤児や遺児には許されないのか。


親の顔も、声も忘れた。忘れなければ生きられなかった。すがり続ければ、壊れていただろう。求め続ければ、狂っていただろう。



「ハハッ、ハハハ、ハハハハ。」



悪いのは誰。子を守らず、捨て駒として教育した大人だ。


感情を捨て、命令を遂行する人形。男も女も関係なく、使えるモノは何でも使う。病死した仲間。治療してもらえず、死んだ仲間も。



「ハハッ、ハハハ。」



叫ぶ枯れ木から、動かない炭に。プスプスと灰になり、赤い火の粉と踊りながら、空へ。


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