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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
703/1638

8-187 俯かず、前を


「コレが、腰麻こしまの国守?」


大石の国守、クベ。パチクリ。


「お願い、出来ますか。」


妖怪の祝、ユキ、ニッコリ。


「は、い。」



クベは闇を広げ、腰麻の国守だったアキを包んだ。直ぐにちぢめられ、指の一本も動かせない。ギュッと締め付けられ、モゴモゴ動く。



口に嚙ませようと思ったが、諦めた。セイウチのような牙と、象のような牙。歯はさめのように鋭く、三列に並んでいたから。


闇が強ければ強いほど、妖怪の角は伸びる。アキの角は短いが、サイのように太い。それが四本。どんな力を秘めているのか分からないが、とてもコワイ。



「クベ。」


「ミカさん。来てくれたんですね。」



耶万やまに滅ぼされた六つの国。うね、安井、井上、久本、大野、安をはらい清めるため、耶万神やまのかみが使わしめたちと、大祓おおはらえの儀を始めなさった。


耶万から溢れた闇ほど広がらず、困るホドでは。そう思っていたが甘かった。川上からネットリした闇が、舐めるようにドッバァ。



「イイがな。『きっと困ってるから、行ってあげて』って。」


ミカが照れながら、ニコリ。



人と妖怪の子を取り上げ、育てている。初めて聞いた時は驚いた。腰麻でも生まれたから。


あんなのを引き取って、育てているのか。人を襲わないのか、食らわないのか。気になって気になって、田鶴たづに尋ねた。すると『人の子と同じように、育てられている』と。


信じられなかった。悦でも光江でも他でも、多くの命が奪われた。なのにナゼ。



「腰麻で一人、見つかったそうですね。」


ミカに問われ、泣きそうになる。


「はい。八つの子が。」


ユキが唇を噛んだ。



人と妖怪の合いの子。その扱いが、社を通して知らされた。同じようにすれば人と暮せるハズ。諦めず、出来る限りの事をしよう。


腰麻の子が産むんだ。殺さずに済むなら、それが良い。幾ら人の子では無いからといって、奪うのは気が引ける。加津に出来て、腰麻に出来ないワケが無い。



「悪いのは妖怪です。私たちも妖怪ですが、その子を死なさず、しっかり休ませる事が出来る。俯かず、前を向いてください。」


ミカの言う通り。逃げずに向き合い、支えなければ。


「はい。」






ジタバタ、ジタバタ。ジタバタバタ。


「こんなに小さくなっても、動けるんだな。」


闇の包みをツンツン。


「大きな牙が、四つも生えてました。」


興奮しながら、クベ。


「そりゃスゴイ。闇が漏れ出す前に、行くか。」


「エッ。」


「中で、渦巻いてるゾ。」


ジィィ。・・・・・・ハッ!


「行くか。」


「はい。」



三妖でポイしに、行ってきます。


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