8-185 清めのプリズム
この度の大祓。先ずは使わしめが囲い、組み上げる。それから神の御力で。問題は獲物の中に、バケモノがいる事。
新たな一族、アンナもマリィも肉体を失っている。妖怪に食われるも、その体を乗っ取ることで存在し、力を蓄えた。
「皆さま、よろしくお願いします。」
耶万神の使わしめ、マノ。
「よろしくお願いします。」
殺神の使わしめ、海布。
「よろしくお願いします。」
万十神の使わしめ、斎。
隠の蛇たち、耶万社にニョロっと集合。
調査の結果、思ったより広がっていたので、大きく三つの線で囲む。北はマノ、風見の北西。東は海布、会岐の南西。西は斎、実山の東。
耶万神は大磯川を清め為さると、天に御手を翳された。光の膜がユラユラ広がり、三つの点を結ぶ。
「さて。」
「では。」
「いざ。」
マノ、海布、斎が作り出した光の壁が、ピィン、ピィンと組み上がる。それから直ぐ、天井と底が出来た。
「グエェェェェェ。」
采を目指して進んでいた妖怪たちが、苦しみ悶える。逃げようにも阻まれ、身動きが取れない。光の壁はドンドン迫り、チョンとでも触れれば、激しい痛みが走る。
「ヴォォォォォォ。」
見惚れるホド美しい光の壁に、ジワジワと追い詰められる。妖怪は諦めが悪い。断末魔の叫びを聞きながら、己だけでも助かろうと踠く。
「ギィィィィィィィ。」
諦めの悪い妖怪が、光の壁をドンドン叩く。焼け爛れ、ベロンと捲れた皮がベチャッ、ベチャッと落ちた。
「何が起きているの。」
采で寛いでいたアンナとマリィの目の前で、ゴロゴロしていた妖怪が煙になる。問い詰めたくても、問い詰められない。
次は私? このままココで? そんなの認めない!
「ギャァァァァァァ。」
凄い勢いで力が吸い取られる。命まで取られる事は無い、と思う。けれど痛い、苦しい。
まだ死ねない。エンを捕らえて、連れ帰らなければ。
「アァァァァァァ。」
体のアチコチを、鋭い串で刺されるような。見えない何かに、締め上げられるような。痛い苦しい助けて。
このままではイケナイ。けれど、どうすれば。
祓い清められた闇が輝きながら、光の柱に吸い込まれてゆく。ユラユラ揺れながら舞うように。柱は少しづつ細くなり、スゥっと消えた。