4-24 形見
早稲の罪人たちが、獄に戻された。
「さて、獣谷の仕置場にて、仕置を執り行う。その務めにつきたい者。居れば、申し出よ。出来る限り、その願い、叶える。」
「祝、宜しいでしょうか。」
「申せ。」
「いつ、どのように申し出れば。」
「まず、早稲の罪人らが、隠し持っていた品、縁ある者へ返す。ただ、そのままでは、辛かろう。釜戸社にて清めてからと、思うが。」
早稲の村長とジンは、奪った品を、奪った時のまま、残していた。つまり、血がついたまま。
話し合いの末、清めてほしい品だけを、釜戸社で清めることになった。そして、すべての品が、縁の者へ。
「次に。」
そう言うと、ピリッとした。
「仕置を執り行いたい者、ここに。望まぬ者、離れへ。」
離れへ向かったのは、シゲとシンの二人だけ。誰も、何も言わない。
「残る、ということで、良いか。」
「はい。」
ヨシが、力強く言った。
「あの三人。早稲の罪人が死んでも、タツは。ワシの子だけじゃない! 奪われた者は誰も、一人も帰ってきません。わかっています。それでも、この手で! そう思います。」
そう、戻ってこない。誰も。
「エイさま。何か、気に病むことが。」
「いや、そうでは、ない。」
エイは考えていた。早稲へ三鶴と玉置が向かう。その前に、虐げられていた人たちが、逃げられるだろうかと。
辛い思いをしてきた人たち。幸せに暮らしてほしい。そのために、祝として出来ること。それは信じること。そう、信じよう。うん、信じよう!
「獣山の子ら、日吉山へ・・・・・・。」
獣山で保護された子ら、すべて。早稲の罪人たちの裁きが終わるまで、狩り人の村に預けられている。日吉社へ託すことが決まってすぐ、使いを出した。既に、日吉社より受け入れと、日吉山へ入る許しを得ている。
「エイさま、日吉は強い山です。託しましょう。」
珍しく? シロが、ババンと言い切った。
「社の司よ、考えがあるのか。」
まあ、ヒドイ。ちゃんと考えてます。
「・・・・・・。」
考えてなかったぁぁ!
「エイさま。」
ロク、申し訳なさそう。伯父さん、シッカリして!
「朝になったら、日吉山へ送り届ける。」
「はい。」
いろいろ飲み込んだようですね、シロ。
「使いは。」
「既に。」
さすが、ロク。デキる禰宜は、違います。
「稲田の子、ツウとコウ。乱雲山へ送り届ける。が、少し。」
少し?
「早稲の罪人ら。仕置を執り行い、見届けるまで、待たせる。」
待たせる?
「エイさま、狩り人なら、多く。乱雲山へ行くこと、かないます。」
シロ、前のめり!
「シロさま、そういうことでは。」
ロク、ジトッ。シロ、???
「そう、違う。コウはジロの孫。谷河の狩り人シバは、稲田のジロを知っている、かもしれない。そうなら会って、話すだろう。」
ほら、ね。伯父さん、そんなで見ないで。はぁ。
負けるな、甥っ子!




