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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
699/1583

8-183 妖怪を捨てるなら


「あぁあぁ、何なの。何だってのぉ。」


イライラ。イラいらイラいらイラ。


「アキ、抑えて。腰麻こしまは広いけど、人が少ないの。」


娘をなだめる母。


「アタシはね、望まれて国守になったの。コレッポッチじゃ全く足りない。」



腹ペコなのは皆、同じ。耶万やまから冬を越せるだけ、食べ物が届いた。けれどアキがバクバク食らい、スッカラカン。


アキは妖怪の国守。物を食べなくても生きられるのに、食べ続けた。腹ではなく、心を満たすため。



昔から比べられた。出来の良い兄姉、弟と。皆、死んだのに今も。いや昔よりも比べられ、ブチ切れた。耐えられず。



妖怪は闇を取り込むことで、健やかに生きられる。人と妖怪の合いの子は人では無い。けれど、同じなのだ。


飲まなければ渇き、食べなければ飢え、寒ければ凍え死ぬ。



だから妖怪の国守は、引き取った子を育てるために働く。


田や畑に手を入れ、食べ物を作る。木を切り割って、乾かせる。狩りに釣り、木の実採りなど。生きる術をシッカリ身につけ、教えられるようにする。



アキは国守なのに、その全てから逃げた。






「あぁあぁあぁ。腹減った、飯食めしくわせ。」


「アキ! あなたは姫なのよ。」


「だから?」


飢えた獣のような目で、母を睨みつける。



キュル、キュルルゥ。・・・・・・ゴクリ。ポタッ、ポタポタポタ。ニタァと笑って、ガブリ。



「アァァッ。」


ガブッ、ジュルジュル。


「誰かぁ!」


バリッ、モグモグ。ゴックン。


「った、す」


ボキッ、モグモグ。


「・・・・・・ぇぇ。」


モグモグ、ゴックン。足りない。もっと欲しい。




「ギャァァ!」


聞いた事の無い、物凄い声が聞こえた。慌てて飛び出し、見開く。家の前で妖怪の祝、ユキに押さえつけられているソレに皆、見覚えがあったから。



おさ、恐ろしい事が起きました。国守が、四姫よつひめアキが側女そばめを。母を食らい尽くしました。」


「そば、め。」



何だ、何が起きた。落ち着け。考えろ、長だろう。そうだ、皆を逃がさなければ。




「長、落ち着いて聞いてください。今からうねに、アキを捨ててきます。」


「采って、あの?」


「はい。耶万に滅ぼされた、あの采です。しき妖怪や、海を越えて来たバケモノが巣くっています。」


「そのような所に捨てて、障り無いのですか。」


「見ての通り、鋭い角と牙を持つ妖怪です。私一妖では殺せないのです。」




アキを捕らえたユキは、腰麻社こしまのやしろへ闇を伸ばした。


腰麻神こしまのかみの使わしめ、田鶴たづに気付いてもらうため。大石にいる妖怪の国守を、急いで呼んで来てもらうために。



どんなに重くても遠くても、クベになら運ぶ事が出来る。ユキの力は二つ。闇を鞭のように扱い、切り刻む力。そして、癒しの力。


どちらも捕らえたまま運ぶのには、全く向かない。



それに大石は会岐あき千砂ちさ、加津の国守と結んでいる。きっと力を合わせて、乗り越えようとするだろう。


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