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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
694/1583

8-178 そうかもしれない


「カツ、見捨てないで。死んでも早稲わさに残って。お願いします。」


「なんだイキナリ。落ち着けヌエ、どうした。」


「カツ。」


「ん?」


「これまでイロイロ、ごめんなさい。」



おさだった父も、跡継ぎだったジン兄も、早稲の皆もだ。逃げ込んできた人に酷い事をした。『早稲の他所よその』人なんて言って、村外れに追いやって。



「謝って許されるとは思わない。けど、ごめんなさい。」



シン兄が出た時、思った。『裏切り者』って。


オレたちが見捨てられたの、当たり前だよ。母さんが死んだんだ。ずっと耐えてきたシン兄が、早稲に残るワケないよ。



ゲンもシゲも、その気になれば。なのに逃げなかった。妹を質に取られて、逆らえなかったんだ。なのにオレたち寄ってたかって、言えないような酷い事を。



「今さら何だと思うだろうが、ごめんなさい。」


「ヒトまで何だよ。」



三鶴と玉置に攻められ、ボロボロになった早稲が持ち直したのはカツが居たから。シゲたちを追って出ようと思えば出られたのに、早稲に残ってくれたから。


それだけじゃナイ。妹が姪か分からないが、セイを捨てずに契ってくれた。


『放り込んどいて何だ』と思うだろう。けどオレたち、引き留めたかったんだ。狩り人、一人も居なかったから。



「そうかい。まっ、知ってたケド。」


「お、こら、ない、のか?」


「怒らねぇよ。」



オレはな、残りたくて残ったんだ。早稲は好きになれない。けど、他よりマシだぜ。何て言うか、行くトコねぇし。


シゲんトコ行っても、出てたと思う。釜戸の裁き、受けたし。



ボロッボロになった早稲を見て、オレ思ったんだ。『遣り直すのもイイかな』って。みんな出たんだ。狩りでオレに勝てるヤツ、居ねぇよ。



「楽しそうね、何の話?」


「おかえり、セイ。」



ユユは遊び疲れてグッスリ、他の子も夢の中。寝る子は育つ!






「そう、良かった。」


「アッサリしてるなぁ。」


「だってヌエ兄さん、人攫いが居なくなったのよ。思いっきり雪遊び、させられるじゃない?」


「早稲の子を攫おうなんてヤツ、居ないだろう。」


「人ってのはね、集まるとオカシクなるの。」


・・・・・・?


「似たようなのが集まる。似たようなのしか受け入れない。で、一人でもオカシイ事すれば、こぞってならう。それが人。」



三人の男が見合い、溜息をく。『そうかもしれない』と思ってしまった。



「まぁ、片付いて良かった。で、ナミは。」


明るい声で、ヒト。


「お墓に手を合わせて泣いてた。『春が来たら、谷西たにしへ戻れるから』って言ったら、『はい』って。」


泣きそうな顔をして、笑った。



男が怖いのだろう、近づくと固まる。だから女に任せた。オレたちには、見守るコトしか出来ない。


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