8-177 どうだった?
食べ物を届けに行ったヌエが、加津から戻って来た。見張りから知らせを受け、カツが向かう。暫くすると舟が。
舳で嬉しそうに尾を振るカナが一吠え。舟寄せに着くなり、トタッと降りた。
「おかえり、カナ。」
「ワン。」 タダイマ。
ワシャワシャと撫でながらニッコリ。『カツって犬、好きだっけ?』なんてコトを考えながら、ゆっくりユックリ、舟を降りた。
「おかえり、ヌエ。」
「ただいま、カツ。」
キョロキョロ。あれ、居ない。どうしよう。『ウチの弟、知らない?』なんて聞けないよ。でも気になる。
舟をヒョイと引っ繰り返し、舟置き場へ運ぶカツに駆け寄り、モジモジ。
「どうだった?」
「えっ。」
「ナミの事、何か聞けたか。」
加津の港に着いたのは日暮れ前。荷を下ろし、割符を受け取ったら日が暮れた。港にはヌエの他に浅木のカト。実山の狩頭、マヤも居た。
それぞれ伝えたい事があったので、加津の長も加わって、話し合った。
釜戸の裁きに浅木の裁き、風見から聞いた話、谷西で起きた事。森で見つけた骸や、ナミから聞いた話などナド。
驚いた。春から増え始めた人攫いは皆、耶万に滅ぼされた国の生き残り。しかも采、大野、安、光江、悦のが集め、売り払っていたのだ。
真中の七国や、鎮の西国に。
耶万に敗れた全ての国が、消えて無くなったワケではナイ。滅ぼされても、耶万に組み込まれて残されている。会岐や千砂のように。
消えて無くなった国は、大きく分けて二つ。蛇谷のように朽ち果てるか、今井のように用いられるか。
隠れ家は安井や松田など、誰も住まなくなった地。久本や今井など、耶万に取り込まれた地の外れ。戦好きで知られる村や、国の近くナドなど。
「使い狐が嗅ぎ回り、イロイロ明らかに。で、社を通して広く知られるようになった。らしい。」
「そうか。」
「驚かないのか。」
「早稲にも居るだろう。シギだって、社の司だぜ。」
「アッ、忘れてた。」
早稲神も使わしめ実も、社に御籠りだ。だからシギが出来る限り、アレコレしている。
国守になった妖怪の話。人と妖怪の合いの子が、どんなか。その扱いや育て方など、知らなければ困る事が知らされた。
人には、どうにもならない。そんな事でも社を通せば、助けられたり救われたりで、何とかなった。
隠とか妖怪とか、祝の力が無ければ見えない。けど居ないとか嘘だとか、偽っているとか言わない。言えない。
「にしても、安井とはねぇ。」
カツが嫌そうに、ポツリ。
「知ってるのか?」
「ずっと前、放り込まれたよ。前の長に。」
・・・・・・。
「ただいま。」
「おかえり、ヒト。で、どうだった?」
「片付いたって。」