8-175 あわよくば
ミカとクベの力は、フタやモトより強い。というより桁違い。
妖怪が持つ力は様様だが、国守が授かった闇の力は攻撃より、防御に適している。
フタは会岐の、モトは千砂の元、祝人。
フタには守りの、モトには清めの力が有った。祝の力は失ったが妖怪になった時、闇の力を得る。どちらも、守りながら戦う事は出来ない。
ミカとクベは違う。
守りに強いってダケで、ガンガン戦えるのだ。二妖とも元、奴婢。憎しみを抱き、妖怪になったのは同じだが、闇の濃さ、深さが違う。
クベは闇を布のように広げ、自在に操る。強度があるので重い物や、多くの人を運ぶ事が出来る。
ミカは国一つ覆い尽くして隈なく調べたり、帯状に変化させ操ったり、縛ったまま遠方へ移動させる事が出来るのだ。
四妖とも神に仕えている。使わしめでは無く、国守として。人を守るために力を尽くす妖怪が、眠っていた闇の力を引き出した。
・・・・・・神様、事件です! 加津神の使わしめロロ、大石神の使わしめバウ。揃って真っ青。
ロロは千砂社へ飛び、バウは会岐社へ駆ける。
会岐神の使わしめクゥ、バウの話を聞いて遠吠え。ワンコ揃って大騒ぎ。
千砂神の使わしめ蜜、ロロの話を聞いて針を出す。刺されると思ったロロ、絶叫。
パニクる使わしめを宥め、神神は御考え遊ばす。ミカの力について、一山に御坐す鳶神に御知らせせねばと。
その前に、加津神の御考えを。
「そうですか。闇が動きましたか。」
ノホホンと、加津神。
使い蜂と使い犬たちが見合い、パチクリ。パチパチ、パチリ。話し合いの末、会岐のワンコに決まった。
「加津神、宜しいでしょうか。」
「何でしょう。」
ニッコリ。
「一山へは、どのように。」
大貝山の統べる地を御治めくださる隠神は、一山に御坐す鳶神。
隠の世は閉ざされているので、御伺い出来ない。となると一つ。耶万に詰めている、大蛇神の使い狐を頼る他ない。
耶万社の下には、タヤと念珠の隠れ家が。
祓い清められ、大貝神の使わしめ、土の使い蜘蛛が詰めてマス。気を付けないと、聞かれちゃうヨ。
「ロロを遣わせ、御知らせします。」
サラリと仰いました。
耶万から溢れた闇の事で、大貝神は大忙し。アッチコッチでイロイロ起きて、テンテコ舞い。丸投げしたくても出来ません。
「大貝神へは。」
もし、ミカの力を御知り遊ばせば。・・・・・・丸投げ、しちゃうカモ。
「フム。」
難しい事でも、ミカの力を以てすれば。と?
大祓により生まれた、新しい妖怪は少ない。というより珍しい。実は、御考えなのです。『あわよくば』と。
「ミカは妖怪。隠の世では無く、人の世に居るだけ。よって、鳶神に御伝えすれば良かろう。」
ニッコリ。
「はい。」
隠す? 違います。訊ねられるマデ、伝えないダケ。




