8-174 帰ろう
「ギャッ。」
「グハッ。」
「イデッ。」
ポンポン放り込まれる、新鮮なゲス肉。
「ナンダ。」
「ウマソウダナ。」
「クウカ。」
祭りだぁ!
生きたまま、食い殺される。
ゲスどもは揃って、泣きながら赦しを請うた。これまで犯した罪の重さを、やっと思い知る。言うまでもなく、許される事は無い。
飢えた妖怪の食欲は、正に底なし。豪快に食らい付き、ムシャムシャ。
手足を引き千切られ、血が噴き出した。ジュルジュル啜られ、傷みが走る。叫んでも叫んでも、誰も助けに来ない。
脳ミソの美味さに気付いた妖怪は、食い方を変えた。まず手足、それから胴。そして頭をユックリ味わう。
次から次に降ってくるのだ、ゲス肉の詰め合わせが山盛り。よって食べ放題。
「さて、と。」
埃を叩くようにパッパと片づけ、ニッコリ。
「にしても、細かいトコまで。」
「ん?」
解体された家がキチンと分類され、崩れないように積んである。
「オレなら、グシャッと潰しそう。」
幼子ってのは、短気なモンです。
「そのうち落ち着くさ。」
ニコッとしてから、スゥっと真顔に。
「焼かれて、残って無いんだ。」
「・・・・・・そうですか。」
これだけ攫ったんだ。いきなりドッと押し込み火を掛けて、出てきたらってか。ヒデェな。
「谷西まで離れてマスが。」
「山を越えた所に、舟が隠されている。」
「使えますか?」
「闇の力で触ったが、割れも欠けも無かった。イケルと思う。」
「帰ろう。今から山を越えれば、日暮れまでに戻れる。」
ミカがニッコリ、明るい声で。
ミカが闇の力で、畳んだ家を運ぶ。ココに残しても朽ち果てるだけ。なら持ち帰り、谷西で使った方が良い。
攫われた人は皆、谷西の人だった。人でも物でも、冬に送るのは良くない。死ぬから。人攫いが動くのは、いつだって作付けの後。だから間に合った、助かった。
「歩けない、動けないって人は?」
「・・・・・・動けますが、足が。」
娘の一人が、申し訳なさそうにポツリ。
「じゃぁ、ハイ。乗って。」
ムゥがトコトコ近づき、背を向けて屈んだ。
歩いてゆけば、山の手前で日が暮れる。だから歩けない人はムゥ、残りの人はクベが運んだ。
一山 越せば川だ。舟に乗って下れば、椎の川に出る。隠されている舟を使えば、谷西まで直ぐ。