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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
688/1583

8-172 大きくなったなぁ


うねでは見た目が全て。美しく生まれれば、美しい布を巻いてもらえる。醜く生まれれば、黒い布が巻かれる。


生まれたときは美しくても、ソレナリに育てば色が変わる。美しさが全て。それが采なんだ、男も女も。



「んなモン知るか。里でも村でも国でも、他に幾らでもある。采だけじゃ無い。考えを押し付けるな、決めつけるな。」



強く巻き締めていた闇が、更にキツクなった。



「オレは、安だぁ。」


「オレは大野ぉ。」


「オレは悦ぅ。」


「オレ、光江ぇ。」



闇でギリギリ縛り上げられ、声の限り叫ぶ。



「知るか。」



ミカにとって、子や女を酷く扱う男は敵。


どうしたって昔を思い出す。前触れもなく、加津に攻め込んだ耶万やま。港で働く爺や婆を、笑いながら切りつけた。


アチコチから『逃げろ』って、『裏切られた』って。



子は皆、親や兄姉に抱えられ、森へ。残ったのは男。子や女を守るため、負けると分かっていても戦い続けた。



人が焼ける臭い、木が燃える臭い。知らない臭いが風に乗り、届けられる。


泣き出したいホド恐ろしくて、ガタガタ震えた。森で見つけた時、駆け寄って抱きしめたよ。


何よりも怖かったんだ、ミミを失う事が。




「許さない。」


ギリギリ、ミシミシ。


「ギャァァァ!」


耳障りなゲスの叫びが、冬の空に響く。



「ミカさん、落ち着いてください。怯えてます。」


大石から、クベが駆けて来た。


「いいんだよ、殺すんだから。」


「えっ、違います違います。ほら、見て。」



安井に残っていた家を、全てポイした事を思い出したミカはあせる。閉じ込められていた人たちが、ひどく青ざめて見えたから。



「驚かせて申し訳ない。谷西たにしおにに頼まれ、助けに来た。」


「ミカさんは良い妖怪です。美味おいしい獣を、いっぱい食べさせてくれました。」


「・・・・・・ムゥ?」


「はい。」


「大きくなったなぁ。」


ムゥの頭を撫でながら、ニコニコ。大石の子はスゴイな。七つ、いや八つでも通るゾ。



ホンノリと心温まるサマを見せられ、ポッカァン。見た目はコワイのに、優しいオジサンにしか見えません。






「ミカさん。コレ、どうしますか。」


クベ、通常運転。


「あぁ。そうだな、捨てるか。」


「ミカさん。捨てるなら、穴を掘らなきゃ。」


「えらいぞ、ムゥ。」


ミカに撫でられ、嬉しそう。



「だ、ずげ、で。」


「じ、に、だぐ、ない。」



・・・・・・ハァ。ナニ言ってんの、助けるワケ無いでしょ。死ぬんだよ、アンタら。一人残らず。


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