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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
686/1583

8-170 覚えていてほしいのは


神に仕える、妖怪の国守。


望まれて就いたのなら、きっと良い妖怪なのだろう。耶万やまから頼まれ、加津から谷西たにしまで。有り難い事だ。



「みなさん、聞いてください。」


ミカが語りかける。



私は死んで、おにになりました。そして妖怪になりました。ひたいからは、大きな角が二本。牙も生え、顔に赤い筋が入りました。


どう見てもバケモノですよ。



国守なんてヤッテますが、言えないような事をしました。神に御仕え出来るような、そんな妖怪ではアリマセン。それでも引き受けました。


誓ったのです、加津を守ると。



あの光を浴びて角も、牙も筋も消えました。妖怪ですが、姿は人と変わりません。知らない人が見たら、人だと思うでしょう。



私には子が居ます。幼子おさなごを一妖、引き取りました。


幸せそうに笑う娘を見て、思うのです。『もし、あの姿を見られたら』と。


娘は私の、この顔しか知りません。あんな姿、見せたくない。皆さんは? 見せられますか。




「私が行きます、教えてください。皆さんが守りたい人は今、どこに居るのですか。」


・・・・・・。


うねには今、悪しき妖怪が集まっています。外へ出れば食われますよ。隠は戦えません。けれど、妖怪なら戦えます。」



隠と妖怪の違いなんて、良く分からない。けれど父でもあるミカさんは、望まれて国守になったミカさんになら、この思い。託せる!



そうだよ、子に恐ろしい姿なんて見せたくない。あの子の中では、私は人なんだ。角も牙も生えてない、人の姿なんだ。


覚えていてほしいのは、人の姿なんだ。



「皆、安井に居ます。囚われて、辛い思いを。」



やっぱり安井か。


北にある采、東にある安と組むも裏切られ、耶万に滅ぼされた国。生き残りは奴婢ぬひとなり、耶万の毒を試され、苦しみながら死んだ。


国守の集まりで聞いた話だ、まことだろう。



滅んで誰も居なくなった安井に、ゴロツキが住み着いた。神は御隠れ遊ばし、社も無い。悪さしか出来ないんだろうな、アイツら。



「私にも子が居ます。妻とせがれは死にましたが、娘は生きています。名はナミ、六つ。どこに居るのか分かりませんが、きっと生きています。」


・・・・・・六つの女の子、ナミ?


「お父さん、逃がすために村に残りましたか。お兄さん、逃がすために戦いましたか。お母さん、娘さんと西へ逃げましたか。」


「はい。」


「そうです。」


「間違い、ありません。」


親子が見合い、頷いた。


「生きてます。ナミさん、早稲わさに居ますよ。」


「早稲。」


暗い顔で、父がポツリ。


「早稲は変わりました。変わったんです。」



風見かぜみから頼まれて、沼田の辺りを探していた時、早稲の新しいおさおみが、倒れていた娘さんを見つけました。


もう冬です。弱っている幼子おさなごを、早稲から谷西へ送るのは難しい。だから春まで預かると。



「春になったら、谷西へ戻ってきます。」


「良かった。助かったのね、ナミ。」


「生きてた、生きてたよぉ。父さん。」


「あぁ、生きてた。」



発見された生存者は、ナミ一人。他は・・・・・・。

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