表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
685/1584

8-169 あなた様は


「な、何だ?」



家が無い、ほとんど無い。焼け落ちたんだ。雪がチラチラ降り出したのに、このままでは凍えちまう。


気の毒に。皆、疲れ果てゲッソリ。泣き疲れたんだ、きっと。ドロンとした目で遠くを見ている。



いくさは終わった、耶万やまは変わった。なのに、どうして。


きっ腹を抱えて眠るつらさ、惨めさ。痛いほど解る。夏でも眠れないんだよ、冷たくて。



「加津の国守、ミカだ。耶万社やまのやしろから頼まれ、食べ物を持ってきた。谷西たにしおさと話がしたい。」



あちらコチラから『たべもの』とか、『助かった』とか、いろいろ聞こえる。


奥からフラフラと一人、近づいてきた。眠ってナイのか、目の下が黒い。衣はヨレヨレ、髪も乱れている。



「谷西の村長むらおさ、イワです。遠く離れた地から、よう御越しくださいました。お休みいただきたいのですが、ご覧の通り。申し訳ありません。」


「いえ、とんでもない。食べ物を大袋に三つ、お持ちしました。どこへ運びましょう。」



焼かれたのは家だけでは無い。倉も畑も焼かれた。大きな村なのに、残った建物は数えるほど。急ぎ掘っ立て小屋が建てられ、身を寄せ合っている。



「では、こちらへ。」


示されたのは、神庫ほくらだった。


「あの・・・・・・。」



現代風に表現すると、大袋一つは米俵一俵と同じ。つまり三俵。どうしたって、ほこらには入らない。



「ハッ、そうですよね。入りませんね。」


お疲れ、なんてモンじゃアリマセン。


「隣に積みましょう。家の中には、入りませんよね。」


掘っ立て小屋を建てるくらいだ、キュウキュウだろう。


「お願いします。」


長が弱弱よわよわしく、微笑んだ。






「許せない。」


うねめ!」


「安も居たぞ。」


「大野もだ。」



神の御業により、谷西は閉ざされている。死んでおにとなり、戻った魂が叫んでいた。



「チリチリも居た。」


「海の人だ。」



光江も加わっていたのか。となると、悦も。人と妖怪の合いの子に、人の味を覚えさせたんだよな。で、食われ食われて、滅びかけている。そう聞いた。



「ミカさん。食べ物を運んでくれて、ありがとう。」


「どういたしまして。で、どこ行く気だい。」


「・・・・・・それは。」



角は生えてないが、牙は生えている。このままでは闇に飲まれてしまう。それはイケナイ、止めなくては。


子を守って殺された親だろう。もし子が、変わり果てた姿を見たら? 見せられない、深く傷つく。



「神が御坐おわす地は閉ざされた。隠や妖怪は許し無く、出入り出来ない。」


「けれど、あなた様は。」


どう見ても、妖怪ですよね。


加津社かづのやしろ後見うしろみに。望まれて、国守になりました。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ