8-167 丸投げ宣言
「着いた。ついたゾ、疲れたな。」
「ワン。」 オツカレ。
舟からヒョイと降り、尾を振る。クイっとしてクンクン。タッと駆け出し、お座り。
「賢い犬ですね。」
加津の国守ミカ、ニッコリ。
「はい。ウチの狩頭が連れて行けと、貸してくれました。」
早稲のヌエ、キリリ。
そうなんです。『ヌエ一人では気掛かりだ』と、ブツブツ言い続けるヒトに呆れたカツが、飼い犬カナを舟に乗せました。干し肉をタップリ持たせて。
早稲から加津まで漕ぎ続け、ヘトヘト。しかし、それはソレ。背筋をシャキッと伸ばし、親愛のシルシとして手を前へ。互いに手を握りあう。
「はじめまして。早稲の大臣、ヌエです。」
「はじめまして。加津の国守、ミカです。」
・・・・・・スキ。って違う違う。シッカリしろ、オレ。
「はじめまして。浅木の釣頭、カトです。」
ニコッ。
ミカと握手したカトは思った。『オレもう、手を洗わない』と。
いや、洗おうよ。一目惚れ? 諦めて。ミカにはミミが居るから。イイも居るから!
「谷西の話は聞いていましたが、安井。確かに気になりますね。」
「はい。神が御隠れ遊ばし、閉ざされず残された地。加えて、あの辺りで調べて無い。となると他には。」
お仕事モードに戻った、カトが伝える。
話を聞きながら、ヌエとミカは思った。『この男、デキル』と。
「解りました。食べ物を届けたら、調べに行きます。」
「ミカさん、ありがとう。お願いします。」
ドサクサに紛れて、カトがミカの手を握った。
耶万に滅ぼされたのは、多くが国。それも大国。
崇める人が一人でも居れば、御隠れ遊ばす事は無い。社が有ろうが無かろうが、お守りくださる。神が御坐せば、使わしめも。
となると、社を通してイロイロ伝わる。いつ、どこで、何が起きたのか。どんな人が暮らしているのかナドなど。
神が御隠れ遊ばした地の事は、行って見ないと分からない。頼むなら隠より、妖怪が良い。もしもの時、戦えるから。
隠は、どんな事になっても隠。とはいえ弱い。
隠と隠なら、まぁソコソコ。人や妖怪には、触れる事すら出来ない。見聞きした事は伝えられるが、『何も出来なかった』と酷く落ち込む。
「加津神。安井の地は今、どのように。」
「さぁ。御隠れ遊ばしてから、経つからね。気になるならロロ、ミカと共に見て御出で。」
「はい。となると、イイは。」
「あの子は賢い。」
「幼子を一人にするのは、如何なモノでしょうか。朝早く発ちますが、その日のうちに戻れるとは限りません。」
「フム。その時は、社の司に任せる。」
えぇっ! 丸投げ?