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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
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8-166 恋の予感?


滅ぼされた国の多くは、耶万やまに取り込まれた。


悦、光江、大野、うね、安だけじゃない。会岐あきや伊東、大石に加津、千砂ちさ腰麻こしま。神は御隠れ遊ばしたが、久本だって残っている。



井上、今井、松田、安井の生き残りは一人も居ない。皆、耶万の毒で死んだ。


『耶万の夢』だ? 毒だ、毒。それを試され、苦しみながら死んだ。そんな地で作られ続けている。使いようによっては、薬になるからと。



にしてはオカシイ。耶万は変わった、と聞く。


万十まと氛冶ふやから大臣おおおみが来た』ってダケでも凄いのに、大蛇神おろちのかみの使い狐まで送り込まれたんだ。偽りようが無い。



このたびの事。動いたのは采だけか? 違うだろう、きっと他にも。


考えられるのは安、大野、光江、悦。あの五つはシブトイ。悪さしなきゃ生きられないのか! 落ち着け、考えろ。



谷西たにしの人は、西の地で多く見つかった。連れていたのは、嬰児みどりご幼子おさんごばかり。大きい子は実山みのやまに逃げ込んだ。


一人じゃ生きてゆけない子の親が皆、西を目指したのか?



そうじゃない、東から攻めてきたんだ。北や南にも逃げたハズ。


六つの子が見つかったのは沼田の東。早稲わさが人を集めて、谷西の北も探した。なのに、一人も見つかって無い。なぜだ。



風見かぜみつわものを久本に送り、調べ上げた。家、倉、森までシッカリと。で、見つかった。縛り上げられた攫われ人が、ウンザリするホド。


その中に谷西の人は、居なかったらしい。



話を聞いた実山が、蛇谷に兵を送った。家は朽ち果て、田も畑も荒れ果て、見ていられなかったと。森も調べたが、何も。


耶万に滅ぼされた国で、調べて無いのは安井だけ。



「フゥゥ。調べたいが、あの辺りはなぁ。」



浅木の三人に、キツぅく言われた。近づいてはイケナイと。


あの地には今、悪しきモノがうごめいている。人が近づけば、パクリと食われてオシマイ。死にたくなければ、決して近づくな。


『死にたくなったら言え。苦しまず殺してヤル』って、言うか? 社の司、禰宜ねぎ、祝。神に仕える人が、そんなコト。



浅木の国守は人、強いが弱い。人だから直ぐ死ぬ、アッサリ死ぬ。妖怪には敵わない。もし妖怪の国守が居たとしても、大祓により生まれた新しい妖怪とは違う。



会岐、大石、加津、千砂の国守は妖怪になった。一度ひとたびは角と牙が生え、顔に赤い筋が入ったそうだ。


光の柱により清められ、角と牙が落ち、筋も消えたと。人にしか見えないのに、とんでもなく強い。



闇の力を持っているのは、会岐と千砂の国守。大石と加津の国守は、闇の力を持っていても使えない。今のトコロは。



「そうだ、調べてもらおう。」



コレを運び込むのは加津。居るじゃないか、新しい妖怪の国守が。


今は使えないダケで、闇の力を秘めている。何かの時に、使えるようになるカモ。国守だ、妖怪だ。闇に飲まれる事は無い。



社の司が言っていた。早稲から運び込まれる食べ物の中から、大袋三つ。谷西へ渡すよう、言われていると。


耶万社やまのやしろからの頼みだ。加津のため、引き取った子のため。断る事が出来たとしても断らないハズ。何せ、加津社かづのやしろ後見うしろみだ。



「色白で整っていると聞いたが・・・・・・。」



加津は港を持つ大きな国。耶万に滅ぼされたがやしろがある、おさも居る。狩り人より、釣り人が多いんだよナ。


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