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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
681/1584

8-165 なんで残ってんだ


「降って、来ぃた。」


調子をつけて、舟を漕ぐヌエ。


「クゥ。」 ソウデスネ。


カツの飼い犬カナ、みよしでオスマシ。






カツは早稲わさを通り過ぎ、浅木へ。


釜戸社かまどのやしろから浅木社あさぎのやしろにシッカリ伝えらえていたので、スンナリ入れた。大野のガガを台ごと引き渡し、課せられた務めを果たす。



早稲に戻って直ぐ、気付く。物物しい出立ちの男。女が少ない、ユユも居ない。おさの家へ飛び込み、ヒトを締め上げた。『いくさでもオッ始めるのか』と。



違った。風見かぜみから『沼田の辺りを調べてほしい』と頼まれ、見つける。行き倒れた谷西たにしの人を。


生き残りは幼子おさなご一人。頬を叩いて水を飲ませ、団子を与える。もの凄い勢いで平らげ、気を失った。



起きた幼子に、何があったのか尋ねる。するとポツリポツリ。刈り入れが終わり、倉に食べ物を納めて直ぐだった。村が、うねの生き残りに襲われたのは。


父は皆を逃がすため戦い、死んだ。兄は追っ手から守るために戦い、死んだ。母は力尽き、死んだ。一人残されたナミも行き倒れた。


他にも居たが、はぐれたと。






「うぅね、滅べって、滅んだか。」


「ワン。」 ハイッ。


尾を振りながら、合いの手を入れる。



信じられないよね、食べ物を奪うなんて。


困ってるなら『分けて』って、頼めば良いのに。社の司が言ってたよ。谷西の人、いっぱい死んだって。


あの子、言の葉は出てたけど・・・・・・。


一人ぼっちで生きてかなきゃイケナイ。好いた男と契った姉さんだって、どうなったか分からない。もし死んでたら。



カツさんが『春まで預かる』って言った。早稲の人に任せるより、良いと思う。何となくネ。そんな気がするんだ。






「加津に変わって良かったよ。」


舟を漕ぎながら、浅木の釣頭つりがしらが呟いた。


「悦だの安だの光江だの、采だの大野だの。悪い話しか聞かねぇ。早稲が良く思えるよ。」


おっしゃる通り。



浅木の社の司から聞いて、驚いた。


実山みのやまでは無く、谷西を狙ったのは分かる。実山には勝てないから。けど、襲うか?


森や他所よそへ逃げた人の多くが、獣に襲われて死んだ。追っ手から逃げ続け、力尽きた人も。



早稲に救われた幼子、生きてほしい。


春まで残るよう伝えたら、黙って頷いた。だから伝えた。『父と兄のむくろを見つけ、葬った』と。社を通した言伝ことづてだ、違い無い。


母の骸は、早稲の女たちによって葬られた。



全て隠さず、子に。そしたら、声を殺して泣いたって。六つだ、まだ六つ。六つの子に耐えられるワケが無い。



「許せねぇ。」



祝の話では、海を渡って来たバケモノを光江、悦、大野、安、采と進ませ、しいのを食らわせた。加えて采には、悪しき妖怪を向かわせたと。


フッ。



奪った食べ物は、真中まなか七国ななくにに送ったらしい。けど甘いゼ。海神わだつみのかみ御業みわざにより、流海川なうみがわの近くに集められた。


岸多きしたが残らず、加津へ運んだってサ。



「にしても気になる。」



谷西は村だが、大きい。狩り人だって居る。そんな村を襲って、食べ物を奪うだ? 采の生き残りダケで、そんな事。


・・・・・・南に、滅んだ国があったな。悪いのが巣くってるって。


そもそも、なんで残ってんだ?


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