8-163 ヨッ、千両役者!
「アンナさま。調査しましたが、壁の無い地には。」
「居ないか。」
「はい。」
見えない壁に守られた地を避け、北を目指す事は出来る。しかし力を得られなければ、イザという時に戦えない。それでは困る。
力を蓄えるには要る。なのに、思うように得られない。奥に入ろうにも閉ざされている。
人と妖怪の合いの子、アレは美味い。もっと欲しい。覗いた記憶によれば、居るには居る。千砂、加津、会岐、大石に強いのが。
丸丸としてキラキラ輝いていた。あの目、絶品に違い無い。なのに、にも拘らず、見えない壁に守られている。
アレを取り込むことが出来れば、もっと強い力を得られるのに。
「ヲォォ、居た居た。」
傷だらけだが、岩のような妖怪が一体。
「何だ。」
アンナに睨まれ、ニッタァ。
「采にな、強い妖怪が潜んでいると聞いた。」
「そうか。」
「オレのモノになれ。」
「は?」
「アンナさま、嬲りましょう。」
「疲れた。サッサと片づけよう、マリィ。」
「はい。」
瞬間移動し、ガブリ。ジュルジュルと吸い尽くし、骨まで食らった。
「可也のモノね。」
「力が漲ります。」
アンナとマリィは暫く、采に残る事にした。食らった妖怪の記憶から、有益な情報を得られたから。
気の良いナニカが吹き込んでいた。『力試しをしたければ、采へ行け』と。つまりココに居れば、新鮮な食料にアリツケル。
「首尾は。」
「上上。」
劇団コンコンの座長と看板役者、見合ってニッコリ。はい、その通り。悪い妖怪を唆し、采へ向かわせました。
ヨッ、千両役者!
「嫌呂さま、悪鬼さま。こちらへ。」
大貝神の使わしめ、土。カサッ。
ここは大貝社。進捗状況を報告しに、参りました。
統べる地に張り巡らされた、蜘蛛の糸は土のモノ。地蜘蛛の糸は強いんだゾ。蜘蛛の子を散らして、アチコチに仕掛けました。
大貝神は御考え遊ばす。この機に乗じて、悪しき妖怪を片づけようと。
悪代官のようにグッフッフと笑ってらっしゃいますが、直日神です。強面で『禍津日神っぽい』なんて言われますが、直日神で在らせられます。
実は困ってイタのです。『大貝山の統べる地は、濃くて美味しい闇が広がっている』なんてデマカセが、実しやかに広がって。
それはモウたいへんヨ。アッチコッチからワンサカ、悪しき妖怪がゾロゾロと。
ホイホイも、毒ダンゴもダメ。見向きもしない。そんな時でした。バケモノ上陸の一報が、社に届けられたのは。