8-162 背に腹は替えられぬ
「ギェッ。」 クルナァ。
「ヂェッ。」 イヤダ。
「ヴャッ。」 コナイデ。
アンナとマリィの魂は融合し、一つの体に宿っている。正確には、妖怪の体を乗っ取った。
神により守られた地に押し入り、消滅寸前まで力を失う。それでも存在しているのは、運が良かったダケ。
アンナもマリィも気付いていない。罠に掛かった事に。
光江で生まれた妖怪の子を、ペロリと平らげ一休み。
比較的キレイな家で丸二日、グッスリ眠った。その間に見た。妖怪の子の記憶、食われた人の記憶、隠の記憶を。
コールタールのように黒く、ネバネバした闇が纏わりつく。気持ちが悪くて仕方がない。胃がムカムカする。動けるようになったら直ぐ、次の国へ。
生き残りは皆、オドオド。あんなの食らっても、腹の足しにナラナイ。
妖怪を探したが、全く見つからなかった。港に倉、車も有った。これだけの国だ、多くの人が暮らしていたハズ。なのに、なぜ。
妖怪の子は大食らいで、人の血肉を好む。初めて食らったのが、己を産んだ母。
酷い話だ。食らっても食らっても満たされず、人が減った。
起きたら悦へ行こう。光江のが逃げ込み、ウジャウジャ居る。妖怪の子が食らい尽くす前に、残らず奪う。
「ギェッ。」 クルナァ。
「ヂェッ。」 イヤダ。
「ヴャッ。」 コナイデ。
悦で生まれた妖怪の子を、ペロリと平らげ一休み。
何を言っているのかサッパリ分からないが、叫び声は同じ。助けを求めるか、命乞いをするか。どうでも良いか。
相変わらず、後味が悪い。ムカムカする。口直しに人を食ったが、味気ない。あの目は何だ。ガタガタ震えて漏らすなど、有り得ない。一匹で止めた。
少し離れるが、次は大野。近くにある腰麻には、見えない壁がある。アレを破るのは疲れるし、せっかく蓄えた力を失いたくナイ。
雪が積もる前に全て回ろう。今、分かっているのは大野を入れて三つ。人と妖怪の合いの子には、ソコソコ強い力がある。残らず吸収し、備えなければ。
「ギェッ。」 クルナァ。
「ヂェッ。」 イヤダ。
「ヴャッ。」 コナイデ。
大野で生まれた妖怪の子を、ペロリと平らげ一休み。相変わらず、何を言っているのか分からない。
それより、どう考えてもオカシイ。人が少な過ぎる。なぜだ。妖怪の子が食らった? にしても少ない。ハァ。次に期待しよう。
「ギェッ。」 クルナァ。
「ヂェッ。」 イヤダ。
「ヴャッ。」 コナイデ。
安で生まれた妖怪の子を、ペロリと平らげ一休み。ココもだ。人が少な過ぎる。目の前で漏らされ、食欲を無くした。
「ギェッ。」 クルナァ。
「ヂェッ。」 イヤダ。
「ヴャッ。」 コナイデ。
采で生まれた妖怪の子を、ペロリと平らげ一休み。ココには居たが不味い。背に腹は替えられぬ。よって、臭くても食った。
・・・・・・何なんだ、まったく。