8-161 耶万の光
「狩られるのは親無し。」
アコが呟き、考え込む。
「悪い妖怪の子を食らったバケモノが、春まで動けなくなると。」
オトも国守、イロイロ聞いている。
「冬の間に、力を蓄える?」
ボソッとウカ。
・・・・・・大貝山の統べる地だけか? 他の地にも広まるのか、禍が。耶万から溢れた闇のように。
「アコ。春までに闇を扱えるよう、努めよ。」
「はい、スオさま。」
「先読の力を持つ子が、『春になったら南で、バケモノが暴れる』と言って、怯えた。」
「嫌呂さま。『バケモノは霧雲山を目指している』と、蛇から聞いたのですが。」
「その通り。」
茅野から良村に預けられたタエが、いきなり叫んで泣き崩れた。大蛇神の愛し子マルに抱きしめられ、ポツリポツリと話し出す。
バケモノが霧雲山の統べる地に来る事は無い。けれどシッカリ祓い清めなければ、南の地から多くの人が押し寄せると。
「大祓により、悪しき隠も妖怪も消えた。にも拘わらず、新たにポコポコ生まれ続ける。」
嫌呂の目が、スゥっと細くなった。
「アコよ、闇の力は恐ろしい。人は弱い生き物。飲み込まれてはイケナイ。」
「はい、心得て居ります。」
闇の力を持つ者は多いが、アコの力は他とは違う。攻撃にも防御にも使える、厄介な代物。もし闇に飲まれれば、一人で国を滅ぼしかねない。
大きすぎる力は、身を滅ぼす。
アコは一人では無い。
他の継ぐ子に力は無いが、祝女や祝人の子。何らかの力を生まれ持つ。と、考えられる。蛇も憑いているし、案ずる事は無い。
「困ったら、いつでも蛇に頼りなさい。耶万神の使わしめ、マノさまも蛇。」
「はい。」
「アコが戻るまで、耶万の事は狐に任せなさい。」
「よろしくお願いします。」
嫌呂も悪鬼も驚いた。『悪意より酷いカモ』とアングリ。スイ、コロ、キキの三人のコトよ。
耶万の生き残り、全てが酷いワケではナイ。良い人も居る。皆が飢えるコトなく冬を越せるよう、いろんな国から食べ物が届けられた。
その食べ物を横流し、横取りしようとしたので狐火で焙った。
鰹の叩きは美味しいが、アレらの叩きはイタダケナイ。シッカリ火を通しても、同じコト。
悪さすれば妖狐に食われる。三バカはガタガタ震え、真っ当になると誓った。生まれつきのワルなので、悪い心を改めるのは難しそうだが・・・・・・。
「春になったら迎えに来る。それまでは。」
「はい。良那に残り、学べるだけ学びます。」
「好い子だ。」
褒められ、チョッピリ照れた。
アコは耶万の光。バケモノのアレコレに巻き込まれ、死なれては困る! これから起こる事が分かったんだ。変えれば良い。それダケのコト。