8-160 冬眠の前に
「良く、良く考えたのですが。」
「認められない。」
「えっ、と。ウカさま?」
「アコ。春まで、良那でシッカリ学びなさい。」
気付かれちゃった。まぁ、そうだよね。雪がチラチラ舞って、キィンと冷える。蛇たちイソイソ、冬籠り。
耶万には万十と氛冶から、大臣が来ている。蛇神様の使い狐が、二妖も遣わされた。
オレが耶万社に戻るまで、シッカリ見張ってくださる。
万十も氛冶も大国、とても強い。耶万の生き残りをビシバシ鍛えて、それなりに仕上げてくれるハズ。
耶万の王になったスイは、とても悪い人だ。母さまを。
決して許さない、許せない。ヤツは腐っている。アレが王なんて信じられない。そう思った。けど、今は違う。
国を守るために、命をポイと捨てる。それが王。
きっと真中の七国や、鎮の西国、中の西国からも攻めてくる。その時、迷わず差し出せる。
スイが死んだらコロ、コロが死んだらキキ。キキが死んだら誰にしよう。フフッ、代わりなんて幾らでも。
「アコ?」
「ハッ、はい。」
イケナイいけない、シッカリしなきゃ。
悪い顔して・・・・・・。
この子を耶万社に戻すまでに、闇との付き合いを。いや、闇から離す事なんて出来ない。付かず離れずの付き合いを保てるよう、導こう。
「社の司とは?」
「はい。神事、社の纏め、仕え人の纏めを行う、人の長です。」
「よろしい。では、人の長とは。」
「神に仕える者として、皆の習い則る人となるよう努め、里や村、国を守るために力を尽くす。どんな時も逃げずに戦い、長や王を諫める。よって人の長は、社の司にしか務まりません。」
キリッ。
この子は賢い。アコなら表と裏から支え、耶万を正しく導くだろう。
「ウカさま。私が生まれ持ったのは、防ぎ守る闇の力。闇は闇でも、奪い飲み込む闇とは違います。」
「そうだね。すまない、アコ。」
闇、蛇と聞いて、恐れを抱かぬ者など。アコは良い子だ、シッカリしている。とはいえ、蛇と話せる子。イヤ止そう。
「少し、良いか。」
良那神の使わしめ、スオ。
「話したい事がある。」
大蛇神の使い狐、嫌呂。
二妖の狐、モフンと参上。
「光江に入った、バケモノの事ですか?」
「気付いたか、アコ。」
スオの目が、スゥっと細くなった。
「はい、先ほど。」
国守に引き取られた合いの子は、人を襲わない食らわない。扱いは、社を通して知れ渡った。
その子たちが同じ事を言った。『海から来た悪いのが、悪いのを取り込んで冬籠りする』と。
「大貝山の統べる地で、合いの子狩りが行われる。」