8-159 似たもの同士
「アコ、どうした。」
良那の国守、オトが問う。
「神が張り巡らし給うた膜が、破られました。」
「ん?」
「大貝神の統べる地に、隠とも妖怪とも違うバケモノが。闇を纏ったバケモノが入り込みました。」
耶万社の継ぐ子、アコは生まれ持った。恐ろしく強い、闇の力を。オレにも有るから判る。アコの力は、隠や妖怪よりも強い。
ここは良那、津久間の統べる地に在る。隣は大貝山の統べる地。
アコの母が生まれ育ったのは、椎の川沿いに在った小さな国。蛇谷の祝には闇を操り、防ぎ守る力が有ったと聞く。
「アコ。そのバケモノは、どこから入った。」
「光江です。」
海沿い、川沿いに狙いを定め、試みていました。力を失いながら西から東へ。殺社の統べる地で干乾び、更に東へ。
神が御隠れ遊ばした地は、アチコチに御座います。この感じは耶万の南。となると、光江か悦。海沿いなら光江です。
耶万が滅ぼしたのは、大きさはイロイロですが何れも国。光江は耶万と結び、助け合っていました。なのに真中の七国と組み、裏切ったのです。
「そう、だったのか。」
「はい、蛇から教わりました。」
アコは人だが蛇と話せる。隠や妖怪、生きている蛇とも、心で。国は滅んだが、蛇との繋がりは今も。そう言って笑った。
「蛇たちは、耶万を嫌わないのか。」
「嫌っています。けれど私を守るため、力添えを。」
「それは心強いな。」
「はい。」
蛇たちは言います。『裏切りダケは、許さない』と。
蛇谷が滅んだ今、私が暮らすのは耶万です。その耶万に禍を齎した光江を、心の底から嫌っています。
闇や伝わる思いから、『バケモノが入り込んだのは光江だ』とも。
人と妖怪の合いの子がポンポン生まれ、多くの人が命を落としました。つまり闇に囚われた隠が、ウヨウヨしています。
「フゥ。となると、そのバケモノは力を付けて。」
「次に狙うのは悦。光江と悦で取り込んだ妖怪の子から、同じような子が安、大野、采に居ると。」
「どれも悪い話しか聞かない、腐った国だ。」
「人しか食らわない妖怪の子に減らされ、あまり残って居ないと思います。」
「それだけ隠が。」
「はい。」
「アコよ、その話。いや、すまない。真だな。」
良那の社の司が、頭を抱えた。
「はい、ウカさま。」
光江、悦、安、大野、采。何を思ったか、良那に仕掛けた国ばかり。耶万に滅ぼされたと聞いて、良かったと思ってしまった。
確か国守、オトの村を襲ったのは、悦と光江だったな。
妻と子を守るために戦うも敗れ、娘の叫び声を聞きながら。それで闇の力を。
妖怪となり、敵を串刺しにした。一度、抱いた憎しみは消えない。アコに寄り添い、扱いを教えるのは、きっと。
闇の力は強い。飲まれぬよう、しっかり導かねば。