8-158 少ない
「ヴゥゥ。」 ハラヘッタ。
食べ物を求め、アチコチ歩き回った。どこへ行っても同じ。石を投げられ罵られ、弓を射られて痛い思いをするダケ。なんで逃げるの。
人の子には親がいて、守ってもらえる。食べさせてもらえる。イイナァ。
腹ペコで耐えられなくて、いっぱい食った。なのに膨れないんだ。食っても食っても足りない。ココで生まれたんだ、ココの子なんだ。なのに、どうして。
子ってのは、一人じゃ出来ない。母さん、父さん、居るんでしょ。出てきてよって、アレ? 良く覚えてないけど、丸めて食ったような気が。
「フゥ。」
何とか入れた。
全ての力を使い切り、フラッフラ。頭が痛い、目が眩む。休まなくては。このまま食らっても吐くだけ。
動けるようになったら、辺りのを狩ろう。
あぁ、疲れた。眠いけどココじゃ眠れない。どこか良い場所、ないかしら。襲われず狙われず、風通りの良い、日が差さない所。
「ヴゥゥ。」 ハラヘッタ。
「ヴゥゥ。」 ハラヘッタ。
「ヴゥゥ。」 ハラヘッタ。
「ヴゥゥ。」 ハラヘッタ。
「ヴゥゥ。」 ハラヘッタ。
「ヴゥゥ。」 ハラヘッタ。
「アァァ! 煩い。」
「アンナさま、囲まれました。」
「仕方ない。片づけましょう。」
己を励まし奮い立たせ、ヨロヨロ歩いて外に出た。カッと見開き辺りを調査。それなりに大きな集落なのに、人が少ない。
オカシイ。あれだけの港が有るのだから、村ではなく国。倉が並んでいた、舟も有ったし家も多い。なのに少ない。
なぜ。
人でも妖怪でも無いアレは異物。人にも妖怪にもナレナイ、半端モノ。低いが知能を持ち、群がって生きる。不気味だが吸収するか。この体では動き難い。
「マリィ、準備は。」
「万全です。」
「では。」
スゥっと息を吸い込みながら、頭を上へ。ハァァっと吐き出しながら、下へ。正面を向いて直ぐ、クワッ。
取り込んだ祝の魂に残っていた、清めの力を有効活用。闇を浄化しながら、効率よく吸収した。
「フゥ。」
生臭かったケド、まぁまぁネ。イイ感じに動けるわ。さて、口直しに・・・・・・。
「少な過ぎる。」
人を食らう妖怪の子から逃げるように、光江から去った。残っているのは親無しと、生きるのを諦めた人たち。
届けられた食べ物の横取り、横流しがバレた事で決まった。光江では無く、加津に運び込むと。
よって光江には、他所から派遣された人が居ない。
水門頭マツは、残るフリをして逃げた。光江の外れにある隠れ家で、イライラしながら待っている。一人で。
死んで戻らない仲間を、生きて戻ると信じて。