8-157 厳罰に処す
マズイまずいマズイ。雨曝しって、幾ら何でも。そりゃ動けないから、コレでも良いんだろうよ。けどさ、違うと思うぜ。
・・・・・・せめて日除け、作ってくれよ。
眩しくて辛い。ヒリヒリする。あっ、アレか。オレを干物にする気か!
「大野のガガ。耶万に滅ぼされた国について、知っている事を話せ。」
浅木の、社の司が問う。
「は? 女の・・・・・・。」
ゴクリ。
何だ、何なんだよ。見える、オレにも見える。赤黒いモヤモヤを背負った女が一人、男が二人。コイツら人か、人なのか?
「見覚え、有るだろう。」
禰宜が闇から生首を出し、ガガに見せた。
「アッ!」
獣に齧られ、ゾッとするホド酷い。
死んだのか、あの狡賢い男が。いつもニヤニヤ、のらりくらり言い逃れる、あの男が。
「大野のカズ。裁きを受ける事なく、早稲の近くで生きたまま、獣に食い殺された。同じ大野だ、揃えるか?」
冷たい目で、祝。
「それは良い。」
禰宜、ニコリ。
「安のトモも、獣に食い殺された。」
社の司がサラリ。
えっ、と。え? トモが死んだ、殺された? 捕まったのか、嘘だろ。おいオイおいオイ、誰が残った。誰が生きてる。
「どうする、ガガ。」
「へ?」
「同じが良いか。」
・・・・・・誰と。
「話す気が有るのか、無いのか。」
来るな近寄るな。アッ、ちびった。
浅木の三人は、闇の力を生まれ持つ。
禰宜が闇からブツを出し、罪人に見せる。社の司は闇を注ぎ、中から押さえる。祝によって切り離された心と体は、裁きが終わるまで戻らない。
隠や妖怪の間では、知られた話。
裁きにより死んだ罪人の首は、社を通して手に入れた。獣が好むのは肉、鳥が好むのは目。残りを虫が食らう前に、闇で隔てて離す。
見知った者が首だけに。それも、酷く傷んで。
目は啄まれ頬は破られ、顎は外れ舌は引き千切られ。首から上がコレなら、体は。考えるダケで震えが止まらない。
「言い残した事は。」
「あ、りま、せん。」
悦のシュウにより結成された、組織の生き残りは二人。光江の水門頭マツと、大野のガガ。
マツはピンピンしているが、ガガは死んでイナイだけ。心と体を切り離され、聞き分けの良い幼子のよう。
風通しの良い倉に移され、食事は日に一度。水は三度、たっぷりと。闇に守られているので、虫や小さな獣とは無縁。
全て片付くまで、隔離される。
釜戸社 特製の去勢台、大活躍。つまり垂れ流し、とっても臭う。
お世話係には、特別手当が支給された。