8-155 生まれつきの悪
タマと根を切り落とされ、縛られたまま埋められた。首から下は土の中、頭だけ出ている。熊がワラワラ集まって、涎をダラダラ。
「だず、げ、で。」
誰も来ない。
「じにだぐ、ない。」
何だよ誰だよ、チョロイって言ったの。洗い浚い打ち明けたら、命だけは助かる。そう思ったから、犯した罪を全て。
そうさ、イロイロやらかした。攫った女を穢してから、並べて売った。
育ちそうな子を探してたら、見つけたんだ。好みだったからさ、抑えられなかった。男ってのは、そういう生き物。
子を攫った、娘も攫った。引き渡す前に楽しんだ。舟に蹴り入れた、転がした。人じゃナイから奴婢だから。
あれ、オレ悪くない。当たり前のコト、したダケ。
攫われたくなけりゃ、出るなよ。里なり村なり国なり、中に居りゃイイ。
外に出たってコトは、『攫ってくれ』って言ってるようなモン。だから望み通り、攫ってやった。
そうさ、みんなヤッテルコト。安でも悦でも光江でも、采でも大野でも息するように。
あぁあ、シクジッタ。バレなきゃ全て、丸く収まったのに。
「ザマぁネぇな。」
戻らねぇと思ったら、取っ捕まって死んでたよ。あのミエがねぇ。采のユリも悦のシュウも、大野のカズも殺された。
隠れ里の掟、か。里に引き込めば、裏切れば子でも。
酷く扱いながら嬲って嬲って。手と足の付け根を砕いて、身包み剝ぎ取られ、森の中に捨てられる。
オレが言うのも何だが、スミ。やっちまったな。
里の子だろう、掟くらい守れよ。まぁ攫われる前から、犬を的にして遊んでたんだ。悪たれ、なんてモンじゃねぇよ。
他の二人。飛国も倭国も病が広がって、バッタバッタ死んでるらしい。
食い物積んで戻ったから、引き渡されたハズ。病で死ぬか、戦場で死ぬか。どっちでも死ぬ。
「いたい、よ。」
オレ、なんて事したんだろう。
言い付けを破って、子だけで出た。犬飼いだから、一人じゃナイからって。いっつも三人で悪さした。犬を木に縛って、的にした。弱いの虐めて、楽しんだ。
早稲のに見つかって、キツク叱られたな。あの時ちゃんと聞いてれば、こんな事には。あぁオレ、殺されるような事しか、してないや。
タギ、コガ。真中の七国でも、シブトク生きてくれ。オレ死ぬけど、生きてくれよ。頼むからさぁ。
「ヴゥゥ。」 チノニオイ。
「ヴゥゥ。」 ヒトカ。
食い殺されるのかぁ。痛いだろうな、苦しいんだろうな。嫌だな、サクっと殺してくれないかな。
「ワヲォォォン。」 ウタゲダァァ。
ガブッ、プッシュゥ。ガツガツ、ガツガツ。ガツガツ、ブチッ。ガツガツ、ガツガツ。
頸動脈を食い千切られ、スゥっと目から光が消える。叫ぶ事も、身を捩る事も無く。
中主の里に居る限り、親も兄姉、弟たちも、後ろ指さされながら生きるんだ。オレの所為で。
生まれてきて、ごめんなさい。言い付け破って、ごめんなさい。殺されるような生き方して、ごめんなさい。ごめんなさい。