8-151 苦しめ、償え、思い知れ
「オイ早稲、オレを助けろ。」
「はぁ?」
カツで無くても呆れる。
大野のガガは多くの人を傷つけ、弄んだ罪によりチョン切られた。
縛られ押さえつけられて、シュパシュパシュパッ。キュッと栓をして、両の手足をキツク結ぶ。動くと、刺すような痛みが。
竹で組んだ台は軽くて、とても強い。尻の下には穴が開けられ、ヒンヤリ。股も涼しい。
布を噛まされているので、言いたい事も言えない。三つ夜を明かし、栓を抜く。尿が出れば生きられる、出なければ死ぬ。
尿が出たので、粥を食べさせてもらえた。御察しの通り、垂れ流し。
六月もすれば動けるようになるが、待たない。冬が来る前に浅木に引き渡す。チョロっとブリっと出たので、台ごと舟に乗せられた。
「女。好きだろ、女。」
コイツ、何を。
「胸か、尻か。」
・・・・・・。
「はじめは硬くても、揉んでるウチに。ククッ。」
「黙れ、食え。」
斜めに割った瓢箪を、ググッとガガの口に差し込んだ。毒消し入りの粥を詰まらせないよう、少しづつ流し込むために。
冷えた粥は飲みにくい。だから毒消しを注ぎ込み、伸ばすのだ。熱で死なれては困る。浅木でも、罰を受けさせなければ。
「くっせぇな。」
風上に居ればマシだが、風下では・・・・・・。
「オレだって、好きで垂れ流してんじゃねぇ。」
ブリッ、ブリブリ。ビチャッ。
「ハァァ。」
カツじゃなくても気が滅入る。
ガガの粥には、いろんな葉物が入っている。つまり、食物繊維タップリ。お通じ対策、バッチリよ。
「オレだって、オレだって恥ずかしいんだ。」
いろいろ、丸出しだモンね。
「辛いんだ痛いんだ、逃げたいんだ助けろ。」
「テメェが攫った子や娘たちは、もっと辛くて酷い扱いを受けた。」
「知るか!」
「ア゛?」
ビクッ、チョロチョロチョロォォ。
「漏らしてんじゃねぇ。」
ガガは、やっと気付く。カツは違うと。早稲だが早稲では無い、早稲に逃げ込んできた他所の人。その生き残りだと。
「逃げたくても逃げられず、助けも呼べずに死ぬモンの気持ちが、テメェに分かるか。」
「あぁ、わ」
「ざけんな!」
食いモンも水も貰えず、飢えて渇いて苦しんで。みんな日に日に弱ってゆく。見てるしか無いんだ、助けたくても助けられない。
オレだってイロイロやらかした。けど殺してない、逃がした。早稲のとは違う。
小さい墓なんて、もう作りたくない。あんな目、誰にもさせたくない。だから奪った戦った。
「『わかる』なんて言わせない。苦しめ、償え、思い知れ!」
タツと違い、カツは弟妹を看取っている。だから子の命を軽く扱ったガガに、強い敵意を抱いた。