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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
661/1585

8-145 こりゃ男だ


「頭でたぁ。いき吐けぇ。」


・・・・・・ハァァ。


「吸えぇ。」


スゥゥゥ。


息張いきばれぇ。」



他の子はヌルッと出てきたのに、ムゥは違う。産みの苦しみに耐えながら、脂汗をダラダラ。息んでも出てこない。



「お婆。」


「肩だ、肩が引っ掛かってる。こりゃ男だ。」


ミカに問われ、言い切る産婆。



モトが肩を支えているので、暴れようが無い。四つん這いのまま、食い縛りだした。慌ててフタが娘の口に、厚く畳んだ布を噛ませる。



「シッカリするんだ、落ち着け。ミカさんは凄いんだ。言ったろう、『もう少しだ』って。」


腰をさすりながら、クベ。


「んん、んぐぐ。」 


息絶え絶えに、娘が叫ぶ。『もう少し』と。



「ムゥ、聞こえるか。肩の力を抜け。」


頭のテッペンしか出てナイが、聞こえたらしい。グリングリン動いた。


「ほれぇ、息張れぇぇ。」


「ングゥゥゥ。」


スポォン。



素早くミカが頭を掴み、タッと外へ駆け出す。産屋うぶやには国守が三妖、産婆も居る。今は、この子だ。






「待たせたな、ムゥ。投げるぞ。」


穴の中に投げ込んでも、中には大熊。強く当たっても痛くない・・・・・・ハズ。


「ソレェ。」



へその緒を付けたまま、大きく口を開けて飛ぶ。


熊は力を振り絞って、右の前足を上げた。スルリと交わし、脇から背へ。アッという間に、首にカプッ。ゴキュゴキュゴキュ。もの凄い勢いで吸い尽くした。



「バウさま! 熊か大シシを、生きたまま。」


「分かった。」


大石神おおいしのかみの使わしめ、バウがタッと森の中へ。



ペラッペラになった大熊を、クルクル巻いて一呑み。思った通り、足りなかったようで。



「少し待て。獣を狩って、戻られるからな。」


ムゥがコクンと頷いた。



母を死なせないよう、抑えていたのだろう。良く見ると、頭も体も小さい。



「ファッフェフィファフォ。」 カッテキタゾ。


犬キックで仕留めた熊の背を咥え、バウが戻った。


「フォフェ。」 ソレッ。


大穴へ投げ込む。



ドンと降ってきた熊にムゥ、大喜び。


首筋に噛みつき、ゴキュゴキュ。ペラペラをクルクルして、もぐもぐゴックン。腹をポンポン。クワァっと欠伸あくびをして、そのままゴロン。スヤスヤ。



「バウさま、ありがとうございました。」


頭を下げるミカ。


「満たされたようで、良かった。」


照れながらバウ、ニッコリ。


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