8-140 報告会議
「妖怪の子は、どのように。」
大蛇神の使い狐、悪鬼が問う。
「会岐で生まれたミイは、国守フタに教わりながら、田や畑の手入れを始めました。」
会岐神の使わしめ、クゥ。
「千砂で生まれたヨヨも、同じです。国守モトに教わりながら、楽しそうに。」
千砂神の使わしめ、蜜。
「加津で生まれたイイは、『満たされるまで食べ、眠る』のを三度。昼前に起きると思います。」
加津神の使わしめ、ロロ。
「で、その子ら。人へは。」
大石神の使わしめ、バウ。
「ミイは食いしん坊ですが、満たされるまで食べた物しか欲しがりません。熊肉も食べますが、シシ肉を好みます。」
フタは元、祝人。狩りは苦手。
となれば、己で狩るしかナイ。そこでミイは考えた。夜、皆が寝静まってから、畑に入る獣を食べれば良いと。
人に見られなければ、恐れられたり怖がられたりシナイから。
畑の中に身を潜め、気付かれないよう気を静める。四つ足の音が聞こえたら、ゆっくり近づきカプッ。ゴキュゴキュ、プハァ。
肉は粥に入れたり、お八つに食べるので残す。
朝、ミイを見つけたフタは頭を抱えた。畑の近くに山積みされた猪の側で、幸せそうに眠っていたから。
ウリ坊を抱いて。
「畑を守るのは、良い事だ。」
キリリ。
「ウン。」
エヘヘ。褒められた。
「作物を狙って来る獣を、次から次へ残らず狩れば、森から獣が消える。ミイの大好きなシシ肉、食べられなくなるゾ」
キリッ。
「そんな・・・・・・。」
ガァァン。
「狩るなら親だけ。子は残らず、森へ返すんだ。その子が育って、子を産み育てる。そしたらミイの大好きなシシが、イッパイ増えるゾ。」
「うん、解った!」
キラキラキラァァ。
「ヨヨもです。好きなのはシシ肉と、小熊の肉。大熊の肉も食べますが、シシ肉を欲しがります。」
蜜、力説。
「となると、イイが欲しがるのはシシと、熊の肉か。」
ロロがポツリ。
会岐社に集まった使わしめたち。生まれた妖怪の子が、どんなか。何を与え、どう扱えば真っ直ぐ育つのか。判った事を話し合う。
大石で生まれたヒイも、千砂で生まれたフウも、人を食らったので殺すしか無かった。もう直ぐ生まれる大石の子は、助けられるなら助けたい。
ミイもヨヨもイイも、人を襲う気が無い。今のトコロは、そう見える。このまま真っ直ぐ育てば、大貝社を通さずに済む。
「哮る前に満たされるまで食べれば、静かに育つようです。大穴まで運ぶ間に、伝えてください。『たらふく食べさせるから、少し待て』と。」
「分かりました。クベに伝えます。」
バウ、ニッコリ。