8-136 神様ネットワーク
「アンナさま、また来ました。乗り移りましょう。」
「マリィ、次こそイケるハズ。」
「はい。」
陸路では体が持たない。そう判断して、海路を選んだ。
はじまりの一族ならイザ知らず、次世代には耐えられない。力を吸い取られ、干乾びるのがオチだ。
国つ神により閉ざされた地でも、人や獣は行き来できる。
繰り返し試し、分かってきた。どれくらい食い込めば向こうへ行けるのか。どれくらい植えつければ、力を奪えるのか。
「ねぇ甲。アレ、どう思う?」
光が届く辺りで、海神。
「そろそろ、イケルのでは。」
神を甲羅に御乗せして、使わしめ。
海社は、海の底に在る。海藻が生えるような浅い海ではなく、光合成が行われない深海に。
社の中は明るいが、日の光は届かない。だから稀に、御出掛け遊ばすのだ。
深い海も楽しいが、浅い海も楽しい。
キラキラ光る日の光、温もり。キュルンとした魚の目、ユラユラ揺れる海の藻。他にもイロイロ。ドキドキ、ワクワク。気晴らしを兼ねてノンビリと。
海中散歩を堪能していたら、耳障りな呟きが。声の主はアンナとマリィ。聞くに堪えないソレは、知らない言の葉だった。
何を言っているのか解らないが、気持ちの良いモノでは無い。知りたいとは思わないが、気になる。だからスイッと近づき、窺った。
・・・・・・ナンテコッタイ。
海を越え、鎮の西国へ。響灘を越え、中の西国に入る。そのまま進み、真中の七国へ。中の東国に入れず、諦めて海に出た。
そこまでして目指すのが、霧雲山。
ナニしに行くの? あの山は強い。近づいたダケで清められ、骨も残らない。
『はじまりの一族』『不死』『エン』『アンリエヌ』と聞いて、やっと解った。不死の力を持つエンという、はじまりの一族を探しに、アンリエヌから来たのだと。
化け王の臣が姿を消した。呼び戻されたのだろう。そんな話をチラっと、使わしめの集まりで聞いた。
「殺神。」
「海布、急ぎ一山へ。」
「はい。」
万十の祝には、先見の力が有る。その祝が見たのだ。隠とも妖怪とも違うバケモノが、多くの人を食らうのを。
神が御坐す地には入れない。だからアチコチ寄って、食らい尽くす。
初めは光江、続いて悦。凄い勢いで進み大野、安、采。一人残らず、骨も残さず、アッと言う間にペロリ。
力を蓄えてから大磯川を下る。耶万に滅ぼされた国を巡り、腰麻に辿り着く。
国守になった四姫を丸ごと食らい、闇を纏うのだ。闇を纏ったバケモノは、大貝山の統べる地を滅ぼす。
祝が見たのはココまで。外れる事も・・・・・・有るのだが。
祝の心の声を聞いた禰宜が、風の力を持つ社の司に伝える。使わしめ斎を交えて話し合い、決めた。万十神と、隠神に御伝えしようと。
殺社に、隠の世から使い隠が飛んできたのは、先見した日の夜だった。