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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
651/1583

8-135 浅木の力


「ハァ。えつうね、大野、光江、安。いづれも闇が渦巻く、ヒトデナシの吹き溜まりじゃないか。」


浅木のおさが頭をかかえる。


「言い出したのは悦のシュウで、動いたのは大野のカズ。采のユリ、光江のマツ、安のミエが加わって、こうなったと。」


溜息をきながら、浅木の祝。






五人が手を組み、耶万やまに滅ぼされた国の生き残りを集めて、攫って売っていた。娘や子を、奴婢ぬひとして。



シュウ、ユリ、ミエは子を攫い逃げたが、捕らえられた。


中主なす菜生なせ中多なた里長さとおさから痛めつけられ、隠れ家や犯した罪などを申し立て、死んだ。


隠れ家や近くから見つかったヤツらも、同じように死んだ。



生きたまま、引き渡してほしかった。とはいえ、気持ちは解る。奪われたのだ。殺されたのだ、二度ふたたびも。



大野のカズは逃げ出した子を追いかけ、早稲わさの人に見つかる。


子を離さなかったので矢を射られ、倒れた。そのまま捨て置かれ、獣に食われて死んだ。



大野のガガは釜戸山の地で子を攫い、捕らえられた。


裁きを受け、タマと根を切り落とされる。生きたまま送られるのは、浅木でも裁きを受けさせるため。



光江のマツは、まだ生きている。



見た者、聞いた者、あかしも押さえた。キッチリ裁いて、同じ痛みと苦しみを与える。決して逃がさない。






「そう難しい顔をするな。」


浅木神あさぎのかみの使わしめ、すみ。思いを残して死んだ魂が集まって、生まれた妖怪である。


「炭さま。」


浅木の祝が平伏す。



浅木の長には見えないし、聞こえない。とはいえ元、狩り人。つまり、カンが鋭く情報通。祝と同じようにこうべを垂れた。


因みに、この男。良村よいむらのセンとシンを、早稲に居た頃から高く評価している。



「雲井の禰宜ねぎから言伝ことづてだ。『早稲のカツが漕ぐ舟に乗せられ、大野のガガが迷いの森に入った』と。」



乱雲山。雲井社くもいのやしろの禰宜クラは、闇の力を生まれ持つ。人のときでは暮せないほど、強い力を。おにの世で暮らしているので、人の世が閉ざされても困らない。


クラにとっては、隠も妖怪もゆかりある者。人と居るより楽しく過ごせる。それはソレで、どうかと思うが。



「・・・・・・弱っている、ようですが。」


「『シブトイ男だから、生きたまま届けられるだろう』とも、聞いた。」


炭がニコリ。



しきモノに囚われた人には、ドロンとした闇が心と魂に絡みつき、ベットリついて離れない。清められない限り、決して。



「堕ちた人の多くは捕らえられ、死んだ。生き残りも、そう長く生きられない。」


浅木の禰宜がニコリ。


「たっぷり甚振いたぶってから、叩き落としましょう。」


浅木の社の司も、ニコリ。




浅木の社の司には、耳の穴から闇を注ぎ込み、命を奪う力。禰宜には物陰など、闇から闇へ移動できる力。祝には心と体を切り離し、意のままに操る力。


何れも強い、闇の力だ。



広く商う豊かな国なのに、他から恐れられているのは、仕掛けられれば直ぐ、叩き潰せる力が浅木に有るから。


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