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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
650/1584

8-134 お祈りポーズのまま


「まだか! まだ届かんのか。」


光江の水門頭みとがしら、マツが叫ぶ。



オカシイ、何かオカシイ。浅木から耶万やまへ、やしろを通した言伝ことづてだ? 何だソリャ。


まぁソレは置いといて、食べ物を送れないって何だ。



早稲わさの外れで攫われ子が見つかった。親に返すまで送れないって、何で。統べる地が違う子が居た? それが何だってんだ。



「何を騒いで居る。」


ゲッ。


「これは嫌呂きろろさま。隠神サマの御社おやしろから、戻られたのですね。」


マツが胡散臭うさんくさい笑みを浮かべ、手を揉む。



「力を持たない私には見えませんが、光江神みつえのかみも御心を痛めて御出おいででしょう。」


舞台役者もビックリの、大きな芝居。下手へただけど。


「何の事だ。」



光江には一柱も、いらっしゃらない。人に望まれるたびに現われ出でられるのだが、直ぐに御隠れ遊ばす。酷く醜いのだ、心根こころねが。



傷つけたい消したい、奪いたい滅ぼしたい。そんな事しか願わない人に、手を差し伸べようとは思えない。


力を強く求める耶万が、可愛かわいらしく思えてしまう。




「浅木からも早稲からも、食べ物が届かないのです。」


胸の辺りで手を組み、マツ。


「『先に攫われ子を送り届ける』と、伝えたはずだが。」


嫌呂の冷たい眼差しに、ひるむ事なくニンマリ。


「それはハイ。しかしイエ、そのような事は。」


マツの猿芝居は続く。



トットと持ってこい!


早稲の米は商いにイイんだ。ごっそり抜いて石ころ入れりゃぁ、誰にも分らねぇ。バレても『はじめからだ』と言い張りゃイイ。何てったって、早稲だからな。



それにしても風見かぜみ、何を考えてヤガル。


早稲が浅木と動いたら、それから送るだ? 送る気ナイのか口だけか。社を通した話だから、偽らないまことだと。


んなモン、信じられるかよ。




「で、何だ。」


狂った目で見つめられても、気持ち悪いダケ。


「ですから、嫌呂さま。」


欲にまみれたオッサンに迫られても、少しも嬉しくナイ。


「光江神の使わしめに、会わせてください。」


お祈りポーズのまま、グイグイ。



何を言い出すかと思えば、コイツ知らんのか。光江に神など、いらっしゃらない。使わしめも同じ。なのに、会わせろだ?


・・・・・・狐火で、焼いてイイかな。



「力を持たぬ人になど、見えぬわ。」


嘘じゃナイよ。


「そこを何とか。」


あ、コレ使える。だからイナイなんて、言ぃわナイ。




ねぇ、知ってる?


光江に運び込まれた食べ物が、包み隠さず横流しされてるって、知れ渡ってるヨ。大稲おおいなも大倉も実山みのやまも、プリプリ怒ってタイヘンだぁ。


もう『頼まれても送らない』ってサ。



ねぇ、まだ気付かない?


姿を見せてナイけど、後ろに悪鬼おき。目の前に嫌呂。狐に挟まれて、動けナイでしょ。その気になれば、フフッ。息も止められるヨ。


悪い顔した妖狐が二妖、尾を振りながらニッタァ。



「あ、れ。い、きが・・・・・・。」


力を入れすぎたか。頭が、クラクラする。


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