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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
65/1709

4-19 言い難い、こと

「オレは悪くない。オレは悪くない。オレは。」


ブツブツ、ブツブツ、繰り返す。


「裁きだ。立て。」


「触るな! アッ。」


膝カックンされ、よろめいた。




早朝、早稲の罪人たちは、引っ立てられた。釜戸社のひとやに入れられ、思い知る。逃げられないと。


かませられていた布が取られ、蹴り入れられた。その獄は狭く、身動きできない。騒ぐと、水をかけられた。清めだと言って。守り人の村にある獄とは、何もかも違う。タツは思い出した。



『オレは思うんだ。タツには、死んでもらってほうがいいんじゃないかって』


シゲが言った。シゲは、村はずれの長。シゲが決めたことには、みんな従う。だから、もう。


「た、すから、ない。助けに、こない。誰も。」


急に怖くなった。




いつもなら、裁きは二つ。昼前と、昼から。けれど、違う。早稲の罪人を裁くから。殺された子の親たち、証人など。人が多いので、社の離れも使っている。


その中にシゲと、商い人のシンがいた。


「シン、どうした。何が可笑しい。」


そりゃ、可笑しいよ。笑い出しそうさ。


「いや、まあ。それよりシゲ。もう少し、休んだほうが。長いこと、舟にゆられて。その、疲れただろう。」


「ありがとう。でも、さ。とても、晴れ晴れとした気持ちだよ。」


「そうか。実は、オレも。」


「そうか。」


「そうさ。」




「早稲の村、言い難い、こと。」


始まった。ただの裁きではない。『言い難い、こと』としか、言えないような、こと。それを裁くのだ。


「まず、早稲の村長。人攫い、人売り。手籠め、殺し。他の村を襲い、滅ぼす。殺しを強い、死なせる。楽しむために、死なせる。従わせるため、閉じ込め、飢えさせる。身籠った女の腹を蹴り、踏み、こおろし。死んだ者を葬らず、森へ捨てさせる。」


「ま、まって。アッ。」


頭を掴まれ、座らされた。


「許しなく、口を開くな。」


狩り人の低い声が響いた。


「調べ。訴え、増え。証も揃う。」


祝人が、静かに言った。




「・・・・・・、・・・・・・。」


あぁ、終わった。逃げられない。そんなに死なせたか? 覚えていない。身に覚えのないこと、なんて言い訳、通らないだろう。証が揃っている。


「ハッ。な、んだ。」


叩かれた。痛いじゃないか!


「何だ、ではない。聞いていなかったのか。」


祝か? 子の声だ。子に裁かれるのか?


「い、いいえ。聞いていました。はい。もちろん。」


とりあえず、おとなしくしよう。


「早稲の村、外れに暮らす人。シゲ。」


「はい。」


シゲ、だと? 生きていたのか。



「早稲の村長の家と、倅ジンの家。早稲の村の、外れに暮らす者、皆で、探しました。そして、見つけた品です。」


「お、お待ちを! いえ、申し訳ありません。」


「良い。続けよ。」


「はい。馬守の村長、シキです。その、箱籠にある品の一つに、見覚えが。」


「そうか。どの品か。もて。」


箱籠の中から、慈しむように取り上げた。間違いない。これは・・・・・・。動けなくなった。


「こちらへ。」


ハッとする。祝人の手には、木で作られた盆が。ああ、そうだ。まだ、だ。そっと乗せ、下がる。




馬につける飾り。結わえてあるのは、衣の切れ端? 黒いのは、血?


「禰宜。」


「はい。」


聞こえないように、小さな声で。


「これ、血?」


すると、小さな声で。


「はい。違い、ありません。」




「シキ、この品は。」


「はい。中井の村からの帰り、姿を消した。い、妹のシマは、アツと共に、姿を・・・・・・。」


溢れる涙。声も震えて、叫び出しそうになる。いけない。ここは釜戸社。堪えろ、堪えろ。


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