8-129 拷問にかけられて
「寝るな、答えろ。」
ザッバァン!
「ハッ。」
なっ、何だココは。北は甘っちょろいって、温いって。
どこが甘いんだ、温いんだ。コイツら人か? 死なないようにギリギリを狙って、嬲りがやる
何だよ! 弱いのが悪いんだ。攫われるヤツが悪いんだ。オレは悪くない。
子連れの女を狙って、連れ去ったダケ。狩り人の子を狙って、連れ去ったダケ。寝静まるのを待って、押し入ったダケ。
あぁ、そうだよ殺したよ。死なせたよ、奪ったよ。それが何だってんだ。売っ払う前にチョット、イイ思いシタ。ナニするのを子に見せて、学ばせてヤッタ。
どうせ売るんだ、堕とすんだ。弁えさせるのが優しさってモンだろう。
「攫った子をキツク縛ったまま、狭くてジメジメした小屋に押し込め、ほったらかした。」
「ぞれが、どぉじだぁぁ!」
『どうした』だと? 獣山で見つかった子は、三人とも死にかけた。ボツボツと何が起きたのか、話せるようになったがな。まだ、一人じゃ何も出来ない。
一人は狩り人の倅。はじめて狩りをしに、親と森に入った。言い付けを守って離れなかった。
言い付けを破って深追いした、同じ里の子を連れ戻すまで『ココを離れるな』と言われ、ジッと待った。
子を一人残した親もドウカと思うよ。犬は残せよ、危ないだろう。『攫ってくれ』って、言ってるようなモンだ。けどな、だからって攫うな。
攫って口を塞いで、縛って転がして。飲ませず食わさず、弱った子をモノ扱い。担いでアチコチ寄って、その度に落としたんだってな。ドスンと。
盗んだ舟に放り込んで、そのまま運んだんだろ?
「だっだら、なんだぁ。」
「なんだ? てめぇ、まだ分かんねぇのか。」
「あ゛?」
「いくら狩り人の子でも、たった九つ。逃げられないように縛ったまま、水も飲ませず。」
人ってのは、水を飲まなきゃ死ぬ。なのにテメェは、一度だって飲ませなかった。
攫ってから、獣山に隠すまで二夜。二夜だ! 放り込まれて直ぐ、力を振り絞って縄を解こうとした。
力が入らず、爪で引っ搔いた。泣きながら。
喉が乾いて死にそうなのに、涙は出たんだと。口に噛まされた布が吸い取って、思ったそうだ。コレさえ無ければ、渇きを癒せたのにって。
「いぎでんだろ!」
「あぁ、生きてるよ。」
「だっだぁぁぁぁ。」
大野のガガは粗い筵に正座させられ、拷問を受けている。膝の上に更に重い石を積まれ、やっと悟る。早稲のより恐ろしいと。
カツに潰された一物が、キュッと縮んだ。
嫌だ、死にたくない。助けて。何でも話します、隠さず話します、残らず話します。だから、お願い。
食い縛りすぎて、歯茎から血が出る。
後ろ手に縛られ、浮腫んだ前腕に縄が食い込む。指先の感覚が失われてから、どれだけ経ったか。痺れさえ感じない。
ズシリと重い両腕が、肩から捥げそうだ。
重いのは腕だけじゃ無い。頭も重い。少しでも後ろへ動かせば、そのままゴロンと取れそう。だから下を向く。
息が苦しい。死にたくない、生きたい。助けて!