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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
643/1637

8-127 赤べこ?


しづめ西国にしくにから攫われ、耶万やま大王おおきみに差し出された。


生き残りは三人。王の末娘ココ、九つ。おさの娘ミア、八つ。兵頭つわものがしらせがれカセ、九つ。


他は、なぶり殺された。



話したがらないが、早稲わさのカツから聞いた話では、男は戦場いくさばへ。娘はもてあそばれ、苦しみながら死んだ。


幼子おさなごは手足の付け根を砕かれ、引き千切ちぎられる。生きたまま捨てられ、獣に食われた。



見たくないのに見せられて、『死にたくなければ騒ぐな。何を言われても逆らわず、何をされても従え』そう言われ、心を折られたと。



「・・・・・・なんて事を。」


釜戸社かまどのやしろの祝、エイがポツリ。



西国の人はオカシイ。なぜ、そんな酷い事が出来るの? 同じ人なのに、どうして。西にも良い人は居る。悪い人だけじゃナイ。でも、奴婢ぬひが。



早稲には『他所よその』人は居るけど、奴婢は居ない。


良村よいむらの人や、隠れ里の人。早稲に残ったカツ、死んだタツもそう。みんな『早稲の他所の』人で、その生き残り。


タツは裁きを受け、獣谷で死んだケド。






「三人とも心の底から、戻りたくないようです。」


疲れた顔をして、り長カイ。


「真っぐ目を見て、言いました。『鎮の西国には、戻りたくない』と。」


悲しそうに、禰宜ねぎロク。


「早稲のカツから言われました。『もし引き取り手が無ければ、シゲが作った村に。アイツになら任せられる』と。」


思いつめた顔をして、狩り長ゴン。


「鎮の三人と矢羽やわのオリは、裁きが終わるまで、釣り人の村に。」


祝、エイがキリリ。



『生きている事だけでも、親に』と言ったら、首をブンブン横に。それから『言わないで、伝えないで』と。


ここは中の東国ひがしくに。鎮の西国の子を引き取るなら、乱雲山が良い。国と国との話なら、雲井社くもいのやしろにしか扱えない。



鼠神がおっしゃった。『鎮の三人は、乱雲山が引き取る』と。従います。でも、浅木に裁けるの?


裁けるように、なったのかな。そうなら、ううん。お任せします。大蛇神おろちのかみおおせだもの。



「大野のガガは、他にも罪を犯しているでしょう。獣山で見つかった子が話せるまで、待ちます。」


「ハッ。」


皆が平伏す。






「急ぎぃ。」


息を切らせながら、狩り人が飛び込んできた。


「申せ。」


難しい顔をして、エイ。


志太しだ司葉しば、矢羽、夜光よひの長が釜戸山に入りました。司葉のミユが見つかり、妹ミヤを攫った男について語ったと。『右の顳顬こめかみに、古い矢傷が有る男に攫われた』と。」



「祝!」


社の司が叫ぶ。


「シロ、ロク。ガガにも有ったな。右の顳顬に傷が。」


「えぇえぇえぇえぇ。」


社の司シロ。赤く塗った、張子はりこの首振り牛のよう。


「はい、ございました。アレは確かに、矢傷です。」


禰宜ロク。赤べこ、じゃない。伯父を横目に、シッカリはっきり答えた。


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