表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
642/1583

8-126 子の命を守るため


「なぁゲン、オレ思うんだ。子を縛ったまま隠したの、南のヤツら。安、光江、大野、うねえつあたりだと。」


「そうだな。キツク縛ったまま転がすのは、安か光江くらいだ。大野も采も悦も、真似まねたんだろう。」



獣谷の隠れ里で、ゲンとシゲが話し合う。マルに止められているので、南へは行かない。大蛇おろちにも止められている。



マルは大蛇のめぐし子。大蛇は、はじまりの隠神。


マルの幸せが良村よいむらの幸せに繋がる。だからシゲは、ゲンにも伝えた。『良いと言うまで、南へは行くな』と。



南へ行かなくても、分かる事はある。獣谷の隠れ里は、祝辺のもりに認められた里。木菟ずくや鷲の目からイロイロと。






「南から上がるのはツライから、纏めて運ぼうと考えた。獣山を選んだのは、熊が出ないから。」


腕を組んだまま、ゲン。



人攫いは少なくても三人。一人は見張り、一人が攫い、一人は姿を隠して備える。


この地に来たのは、もっと居るハズ。盗まれた舟は、オレが知ってる限り五隻。帰りは川の流れに乗れるから、一人で四人は運べる。


娘を先に運んで、子は隠れ家に。シゲたちが見つけた他にも、どこかに隠されているハズ。その子たちは残らず、冬が来る前に南へ運ばれるだろう。モノとして。



「獣山で見つけた三人とも、一度ひとたびは目を覚ました。ずっと寝てるが、抱き起せば水を飲ませられる。」


悲しそうに、シゲ。



子の命を守るため、茅野に運び込んだ。


あんなに酷くては、とても身が持たない。飯田の方が近かったが、寝かせたまま運ぶなら、川の近くにある茅野の方が良い。



「どこの子か、もう分かったのか。」


「男の子はキン、女の子はチイとミヤ。ミヤは姉と攫われたらしい。どこの子かは、まだ。」


「そうか。」



子らは肉付きが良く、柔らかくて良いころもを着ていた。だから豊かな里か、村から攫われたと思う。きっと親が探している。


釜戸山の灰が降る地なら、直ぐに訴えるだろう。『ウチの子が居なくなった』と。



茅野社かやののやしろを通して、釜戸社かまどのやしろに伝えてもらった。下調べと聞き取りが終わったら、祝人はふりとが呼びに来る。それまで待つよ。」


「なぁシゲ。カツが早稲わさに戻ったのは、知ってるかい。」


「らしいな。親になったって。」


「アイツが?」



タツも酷かったが、カツの歪みっぷりもはなはだしい。そのカツが、子の親になったのか。



「カツが、どうした。」


「子を四人、早稲から連れてきたって。」


「へぇ。・・・・・・ヤツら攫った子を、早稲に隠したのか。」


「詳しくは分からん。けど舟寄せの辺りなら、隠せるだろう。」


「確かに、あの辺りなら。」



「シゲ。もし子が『戻りたくない』って言ったら、その時は。」


「ウチで引き取る。」



攫われ子は戦場いくさばに放り込まれるか、売られる事が多い。返しても、その親も奴婢ぬひなら、また。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ