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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
641/1585

8-125 詳しくは分からないが


司葉しばから攫われた姉妹の、姉が見つかった。」


「それはまことか。」


夜光よひおさが、志太しだの長に問う。


「真だ。ウチの狩り人が見つけ、里に連れ帰った。」


志太の長がニコリ。


「ココに来る前に、シッカリ確かめたよ。攫われた娘に違い無い。」


司葉の長もニコリ。



なんてコッタイ。他にも攫われた娘が、二人も居るのか。


川上には幾つか、里や村がある。風見かぜみが滅ぼした、三つの村の他にも。




・・・・・・にしても何だ。攫った子の口に布を突っ込んで、更に布を噛ませて結んだ? 逃げられないように木に縛り付け、子を残して離れた?


獣に食われる前に、他所よそへ運ばれて良かった。いや良くないが。攫った姉妹の一人を、それも幼子おさなごを残すか?


信じられない。人のする事か、いや違う。バケモノだ。




「ウチの狩り人に聞いたんだが、攫われた矢羽やわの子が、早稲わさの生き残りに救われたらしい。」


少し明るい声で、ヤコが話した。



志太も司葉も、畏れ川の西にある。夜光は東にあるので、狩り場も東。


矢羽と夜光は遠く離れているが、間に大きな川は流れていない。越えるのは山と、飛べば越えられる川だけ。




夜光の狩頭と、矢羽の狩頭の付き合いはソコソコ長い。はじめて狩りに出た時、森の中で出会った。


矢羽も夜光も隠れ里だが、二つの里には大きな違いがある。矢羽は釜戸山と結んでいる。



矢羽の里が在るのは兎原うさはらの西。つまり魚川にも、鳥の川にも出られる。


森の奥で狩るより、釜戸山が取り仕切っている大きくて、豊かな狩り場で狩る事が多い。




「釜戸山に連れてきたのか? 早稲が。」


「風見と結んだ、あの戦好きが?」


『信じられない』という顔で、ワタとイオ。



そりゃそうだ。早稲は戦好き、悪いうわさしか聞かない。


見つけた子が攫われ子だと分かっても、つわものとして育てる。戦場いくさばに放り込む。それが早稲だ。



見つけたのは『早稲の他所の』人。早稲の人だが、早稲の人とは違う。早稲の人はセイの力で少し、良い人になった。



セイは思い込みが激しく、歪んでいる。


そんな娘に叩き直され、早稲の人は変わった。従わなければ生き残れない。もし逆らえば、死ぬ事になる。そう信じて疑わない。




「詳しくは分からないが、早稲に残った生き残りが死んだ長の娘と契り、早稲を変えたトカ。」



釜戸の裁きにより罰を受け、早稲に戻ったカツとヌエ。カツが大きく変わったのは、我が子ユユを見た時。


ユユの親として、恥ずかしくないように生きよう。そう思った。



ヌエは『甥か姪、ドッチだろう』くらいにしか、思わなかったが・・・・・・。




「でだ。その矢羽の子の他に男の子が一人、女の子が二人。釜戸社かまどのやしろに託された。」


「なんだって!」


「確かか!」


ワタとイオが、ヤコに詰め寄った。


「あぁ、そう聞いた。」



三人はしづめ西国にしくにから攫われた子で、隠れ里の子では無い。しかし思った。『生きて戻った』と。


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