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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
639/1583

8-123 許せない!


大野のガガが攫ったのは、矢羽やわのオリだけでは無い。


目覚めた三人の子は皆、ハッキリと覚えていた。右の顳顬こめかみに、古い傷が有る男に攫われたと。



浅木に渡さなくても良いなら、チョン切ってから獣谷に捨てる。生きたまま、獣に食わせる。ドボンの刑では軽すぎる!



三人とも、一度ひとたびは目覚めた。水を飲ませてもらい、虚ろな目で言ったのだ。名と、傷の事を。それからスゥっと、深い眠りに。



眠り続けている。けれど抱き起こして飲ませれば、ゆっくり飲む。


良村よいむらのムロが言った。『溜まった毒を出すには、水をタップリ飲ませるしか無い』と。




縛られたまま狭い所に押し込められると、体に悪いモノが溜まる。浮腫むくむ、しびれる。だから子らは狭いのに、仰向あおむけになった。それでもつらかったハズ。


口に布を突っ込まれ、更に布を噛まされ結んであった。手も足もキツク縛られ、紫色に。



『見つけるのが遅れたら、死んでいたと思う』と。『放り込まれてから、二日は経っている』と。


よく生きていた。生きていて良かった。心の底から、そう思う。




「許せない!」


そう言って、エイが口をギュッと結ぶ。


「もし、そう考えるだけで怒りが。」


ナガが、父の顔に。


「えぇ。」


サカが、伯母の顔に。


「さぁ、どうぞ。」


従兄の顔になり、ササ。エイのてのひらに一つ、サルナシの実を乗せた。



エイはナガの一人娘。愛しい妻が、命と引き換えに産んでくれた宝。『後添のちぞえを』と言われても断り続け、慈しみ育てている。


サカはナガの姉。男手一つで姪を育てる弟を、しっかり支えている。息子ササは、エイを妹のように思っている。ナガの次に、エイに甘い。






「い、たい。」


誰か頼む、冷やしてくれ。痛いし熱いんだ!


「たす、けて。」


色がオカシイ、れてる。アイツ、思いっきり踏みやがった。



『タマ潰されるダケで、許されると思うな』だと? 早稲わさの子じゃナイのに。何が『早稲のモン』だ。違うだろう、クソ!


覚えてろ、膝蹴りにして踏んずけてやる。早稲が怖くて人攫いが出来るか。ちょっと強いダケ、戦い慣れてるダケ。それなのに!



「うぅぅ。」


痛いよぉ。


「シッカリしろ。」


バシャンと、ガガの股間に水を掛けた。


「キッチリ裁きを受けさせる。」



南の地からワザワザ、こんな山奥に来て子を攫い、酷い扱いを。コイツは人か? いや違う。人の皮を被ったヒトデナシ。化け物だ。


釜戸山が取り仕切る狩場で、多くの子が攫われかけた。直ぐに捕まえ取り返したがコイツ、どれだけ攫った。どれだけ奪った、どれだけ殺した。



「引き渡すまで、決して死なせないからな。」


おさカイが、冷たい目をして言い放つ。


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