8-122 伯父さん、しっかり
釜戸社にて、裁きの話し合いが行われた。サクサク進み、残るは一つ。早稲の近くで見つかった、攫われ人について。
「・・・・・・ハァ。」
祝じゃなくても、溜息を吐きます。
「踏み潰されたと聞いた時は、思いましたよ。『なんて酷い事を』と。」
社の司、力説。
「南でも裁くなら、ドボンもポイも出来ない。チョン切っちゃイケナイの?」
「いけません!」
クワッ。
早稲から釜戸山に向かっていたカツが、薊原で大野のガガを捕まえた。連れてきた子は、合わせて四人。
早稲の舟寄せの近くで、救い出された子は八人。森の中で救ったのは二人。うち一人は娘で、出来る限り尽くしたが、死んでしまった。
森で見つけた子を攫った男は、大野のカズ。子を取り返すため、早稲の女たちが矢を放った。死にかけたまま捨て置かれ、獣に食われて死んだ。
子を入れていた袋など、懐に隠し持っていた割符の他は、釜戸山に持ち込んだ。
割符は浅木に渡すため、早稲にある。『確かめるなら早稲へ』と言われた。
大野のカズは、生きたまま獣に食われるようなコトをした。死んだ娘さんを、攫った子の目の前で穢した。だから鎮の子たち、男を怖がる。遠ざけようとする。
早稲に救われた娘が一人、子は九人。合わせて十人。死んだのは腰麻の娘、名は分からない。けれど早稲で、手厚く葬られた。
親の元へ返された五人は、南に在る隠れ里の子。三人は耶万の大王に差し出された、鎮の西国の子。残る一人は、兎原で攫われたオリ。
オリは矢羽の、狩り人の子。
生き残るため、里に生きて戻るため、出来る限りの事をした。弓を折って攫われたと伝え、人攫いからイロイロ聞き出し、早稲の長たちに残らず伝えた。
「酷い話だ。」
禰宜がポツリ。
「そうだ、その通り。踏み潰すなど。」
「なに言ってんの、伯父さん。」
「ロク! ココでは社の司か、シロさまと呼びなさい。」
キリッ。
「シロ、違う。多くの子を攫い、狭くて暗い掘っ立て小屋に押し込め、攫った娘を・・・・・・。」
「エイさま?」
「攫われ、逃げ出せず、そのうえ。考えたダケで辛い。」
祝の目から、涙がポロポロ流れた。
「エイさま、急ぎ御伝えします。」
「申せ。」
狩り人の村に、志太の狩頭が参りました。
森の中で見つけた娘が目を覚まし、言ったそうです。『木の実を採りに森に入り、男三人に攫われた』『妹を攫った男の右の顳顬に、古い矢傷が有った』と。
娘は司葉の娘ミユ。妹の名はミヤ、年は七つ。
「ロク。獣山で救い出され、茅野に運び込まれた三人。」
「はい。やっと目覚めた子、名はミヤ。姉と共に三人の男に囲まれ、攫われたと。」
「エイさま、その子が何か。」
一同、ジト目。
「・・・・・・ん?」
シロ。首を傾げ、ニコッ。