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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
638/1583

8-122 伯父さん、しっかり


釜戸社かまどのやしろにて、裁きの話し合いが行われた。サクサク進み、残るは一つ。早稲わさの近くで見つかった、攫われ人について。




「・・・・・・ハァ。」


祝じゃなくても、溜息をきます。


「踏み潰されたと聞いた時は、思いましたよ。『なんて酷い事を』と。」


社の司、力説。


「南でも裁くなら、ドボンもポイも出来ない。チョン切っちゃイケナイの?」


「いけません!」


クワッ。



早稲から釜戸山に向かっていたカツが、薊原あざみはらで大野のガガを捕まえた。連れてきた子は、合わせて四人。


早稲の舟寄せの近くで、救い出された子は八人。森の中で救ったのは二人。うち一人は娘で、出来る限り尽くしたが、死んでしまった。



森で見つけた子を攫った男は、大野のカズ。子を取り返すため、早稲の女たちが矢を放った。死にかけたまま捨て置かれ、獣に食われて死んだ。



子を入れていた袋など、ふところに隠し持っていた割符わりふの他は、釜戸山に持ち込んだ。


割符は浅木に渡すため、早稲にある。『確かめるなら早稲へ』と言われた。




大野のカズは、生きたまま獣に食われるようなコトをした。死んだ娘さんを、攫った子の目の前で穢した。だからしづめの子たち、男を怖がる。遠ざけようとする。




早稲に救われた娘が一人、子は九人。合わせて十人。死んだのは腰麻こしまの娘、名は分からない。けれど早稲で、手厚く葬られた。


親の元へ返された五人は、南に在る隠れ里の子。三人は耶万やま大王おおきみに差し出された、鎮の西国にしくにの子。残る一人は、兎原で攫われたオリ。



オリは矢羽やわの、狩り人の子。


生き残るため、里に生きて戻るため、出来る限りの事をした。弓を折って攫われたと伝え、人攫いからイロイロ聞き出し、早稲のおさたちに残らず伝えた。




「酷い話だ。」


禰宜ねぎがポツリ。


「そうだ、その通り。踏み潰すなど。」


「なに言ってんの、伯父さん。」


「ロク! ココでは社の司か、シロさまと呼びなさい。」


キリッ。


「シロ、違う。多くの子を攫い、狭くて暗い掘っ立て小屋に押し込め、攫った娘を・・・・・・。」


「エイさま?」


「攫われ、逃げ出せず、そのうえ。考えたダケでつらい。」


祝の目から、涙がポロポロ流れた。






「エイさま、急ぎ御伝えします。」


「申せ。」



狩り人の村に、志太しだの狩頭が参りました。


森の中で見つけた娘が目を覚まし、言ったそうです。『木の実を採りに森に入り、男三人に攫われた』『妹を攫った男の右の顳顬こめかみに、古い矢傷が有った』と。


娘は司葉しばの娘ミユ。妹の名はミヤ、年は七つ。



「ロク。獣山で救い出され、茅野に運び込まれた三人。」


「はい。やっと目覚めた子、名はミヤ。姉と共に三人の男に囲まれ、攫われたと。」


「エイさま、その子が何か。」


一同、ジト目。


「・・・・・・ん?」


シロ。首を傾げ、ニコッ。


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