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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
637/1583

8-121 子には見せません


カツに手招きされ、オリがタッと駆けてきた。頭をポンポンされ、ニコリ。それからジィィ



「大野のガガです。兎原うさはらでオレを攫った、悪いヤツです。コレと同じ傷が、左の脇腹にも有るって。耶万やまつわものから逃げる時、後ろから射られたって言ってました。」


ひたいの傷を指さして、キリッ。


「ちがぁっ。」


オリが見上げている間に、素早くガガのへその下を蹴る。小さく呻きながら静かになった。それから、ピラッ。



「有るな。」


「確かに。」


「違い無い。」



「お、れは、悪くなァァァァァァ!」


衣を足で戻してから、グッチャァ。抱き上げてから潰したので、オリは何も見ていない。


早稲わさのモンに手ぇ出して、悪くナイだ? タマ潰されるダケで許されると思うなよ。」



一蹴り一グチャだけでもタイヘン。なのに臍の下を蹴られ、追踏おいぶみまで。結果、口から泡を吹いた。白目で!



「小屋で待ってろ。話が済んだら、直ぐに戻る。」


優しく下ろし、オリの頭を撫でた。


「はい。」


カツの目を見て二コリ。それからウエとキイに頭を下げ、小屋の中へ。






「オレ、川田のキイです。カツさん。子を四人、連れてらっしゃいましたが。」


気の所為せいか、内股に。


「兎原にも釜戸山の灰、降るだろう? だから釜戸山にな。他の子は残らず、親に返した。いま話せるのはココまでだ。」


「そうですか。」


「コイツ、頼めるかい。女の子が嫌がるんだ。オレはイイらしい。けど、男が怖いんだろうな。」



酷い扱いを受けたのか、見たのか。どちらにせよ、心に深い傷を負ったのだ。どう言えば・・・・・・。言の葉が出ない。



確か一人、早稲に残ったと聞いた。名をカツ。


子を攫ったのを、馬守と良村よいむらの人に見つかり、釜戸社かまどのやしろに突き出され、裁きを受けたと。



生きて戻ったのか。


迷いなく踏み潰したが、子には見せなかった。髪を掴んで引っ張り上げたのも、子が小屋に入るのを確かめてから。



火口ひのくちに吊るされて、生まれ変わったのか? 元は『早稲の他所よその』人。その生き残り。早稲で生まれ育った人とは、何もかもが違うのだろう。



「解った、オレたちが運ぶ。」


ウエがニコリ。


「朝餉を食べさせてから、釜戸山へ向かうよ。」


カツもニコリ。






「なぁ、どう思う。」


舟を漕ぎながら、ウエ。


「慣れている。戦うのも、守るのも。」


舟に転がされたガガをチラ見して、キイ。


「そうだな。アッと言う間だった。」



サッと前から近づき、股間を蹴り上げながら奪い返す。言うのは容易たやすいが、行うのは難しい。それを、流れるように遣って退けた。


どれだけ戦えば身に付くんだろう。良村の人も、守りながら戦える。・・・・・・早稲、どんな村なんだ?


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