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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
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8-119 来たキタ


「クソッ。クソクソ、クソォォ。」



マズイまずいマズイぞ。一人も連れ帰らず、戻ったら殺される。せっかく生き残ったのに、好きに暴れられるのに、まだ死にたくない。


攫おう。


確か川の近くに、小屋があったな。あの中に居れば、男でも女でも狩り人の子。顔を洗うのに外に出るハズ。攫うなら、その時しかナイ。


獣山から鮎川に出て西へ。底なしの湖、早川、鳥の川と進み、流れに乗って下る。



ガガは全く気付かない。多くの狩り人に、アチコチから見張られているコトに。






釜戸山が取り仕切る狩場は、どれも大きい。小さい狩場は、皆で取り仕切っている。その一つが、川沿いにある薊原あざみはら


えぐれたように広がる野原は、切り立った崖に守られている。だから川からしか行けない。食べられる草や、薬になる草が多く生えている。



草は摘む時によって効き目が違う。朝早く、雨上がりの昼、月が輝く夜など。だから休めるように、小屋が建てられているのだ。






「さぁ、着いぞ。」


カツが舟を降り、みよしをグイッと掴んで引っ張る。


「ここなの?」


カセが呟く。


「違うよ、ここは薊原。」


オリが得意気に、ニッコリ。




オッ、来たキタ。ツイてるネ、子が四人。


あの男、狩り人だな。犬は狩り犬って、気付かれたか。イヤ気のせいだ。コッチを見ず、真っ直ぐ向かった。



良く聞こえない、何を話してやがる。


アイツらオカシイ。犬連れの男一人に、子が四人? 先を歩いてるチビは、あの男の子だろう。残り三人は、なんだ?



犬が守るように歩くってコトは、獲物。


けど、あの感じ。違う気がする。子が持ってる袋ん中、なに入れてんだ? 斜め掛けしてる瓢箪ひょうたん、中は水か。



ヒョロヒョロしてる三人は女、イイ尻してる。ククク、たまんねぇ。




小屋から煙が出た。袋の中は食いモンかってまぁ、そうだろうよ。


・・・・・・ケッ、日が暮れた。なんで犬、出さねぇんだ! 外に出てなきゃ殺せねぇ。




あの狩り人、強そうだが子連れ。守りながら戦うのは避けるだろう。犬を連れてなきゃ、ダッと押し入るのに。あの三人を攫えれば、それでヨシとしよう。


寝てる間に忍び込んで、ってのはマズイ。攫えても逃げられねぇし連れ出せねぇ。とっ捕まる。ハァ、待つか。朝まで。






「あのな、外にアヤシイのが居る。あの感じ、人攫いだ。夜明けまで動けない、動かない。攫っても舟は出せない、逃げられない。おまけにコワイのが出る。」


子らが、さじを持ったまま固まった。


「気にするな、食え。来ねぇってコトはアッチは一人。コッチにはカナと、このオレが居る。割と強いぞ。」



早稲わさの他の人とは、大きく何かが違う。早稲に残った他所よその人は、カツさんダケ。


湯場があったのは村外れ。他にもイロイロあったけど、全て『早稲の他所の』人が残したモノ。そう聞いた。ってコトは、賢くて強い。



考える事は皆、同じ。子らが見合い、力強く頷いた。


「はい。」



子も犬も、美味おいしそうにモグモグ。


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