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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
633/1583

8-117 少しでも早く


「・・・・・・こ、こは。」


「おや娘さん。水だよ、お飲み。」



攫われた人を探しに、狩り人が集められた。その一人がウチのタヤ。で、凄い顔して言ったんだよ。『母さん、助けて』って。


人攫いは目に付きにくそうな所に、隠れ家を作るだろう。そう思って探してたら、小さくなって隠れる人を見つけた。それが、この娘さん。



「あの、ここは。」



私、生きてる。あの男から逃げ切り、助かった。早くミヤを助けに行かなきゃ。あの子、きっと泣いてるわ。木に縛り付けられて、一人残されて。


逃げられないじゃない! 生きたまま獣に食われるかも。イヤよ、そんなの。何も悪い事して無いのに! 神様、お願いします。ミヤをお守りください。



志太しだの里さ。人探しに出たせがれが、森の中で倒れてた娘さんを見つけてね。ウチに連れ帰ったんだよ。」


「私は司葉しばのミユ。ミヤと、妹と木の実を採りに山に入ってぐ、知らない男三人に囲まれて。口に布を突っ込まれて、攫われました。」


「なっ、なんだって!」



『シバ』ドッカでって、思い出した。狩りおさから聞いた、釜戸山で会った隠れ里の人。その里の一つが司葉。畏れ川を上がって、奥に入ったトコに有るって。




「母さん戻ったよって、良かった。オレ志太の狩り人、タヤ。君は?」


「司葉のミユ。助けてくれて、ありがとう。」


「タヤ。狩頭、呼んどいで!」


「ハイッ。」






なんてコッタイ。十二の姉と七つの妹を、大の男三人で囲んで攫っただ?


口に布を突っ込んで、細い布でくくる。で、子は木に縛り付け、娘だけ舟に乗せて南へ運ぶと。



手慣れている。


ウチのキンを攫ったのも、同じヤツだろう。にしても凄い娘だな。口が閉じられず、腕を後ろで縛られたまま、舟から水に飛び込むとは。



でも、そうか。同じ有様ありさまで、妹が木に括り付けられてんだ。迷って居られないよな。とはいえ妹さん、気の毒だが・・・・・・。




「ミユさん。今から舟を出して、川を上がる。でもな。」


「分かっています。私が運び込まれてから、たくさん経っている。だから・・・・・・それでも。」



ミヤは怖がりなんです。だから近くか、真っ直ぐ走って戻れる所でしか採りません。あの日も、そうでした。


私に力が有れば、ミヤだけでも逃がせたのに。



はじめに捕まったのはミヤです。それから直ぐ、私も捕まりました。


一度ひとたびはミヤの手を引いて、取り返したんです。でも見張りが一人、近くに居るのに気付かなくて。ヤツら、迷わず川へ走りました。



私たち、担がれても暴れました。


ミヤは小さいから、運びやすかったのでしょう。私は落っことされて、頭を打ちました。ボンヤリして、でも拳を作って見開いて。だから確かです。



胡桃くるみの木の前を通り、柞原ははそはらに出て、川縁かわべりの樫まで。グネグネで分かりにくい獣道を、人を担いで迷わず。




妹を襲った男。右の顳顬こめかみに、古い矢傷が有りました。かすったのでは無く、ザックリ切れたって感じのが。



攫われた娘は、私の他にも二人。私はへりに転がされたので、何とか逃げられました。


ヤツら他に、もっと攫ってます。人を人だと思わない悪者わるものです。


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