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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
632/1583

8-116 この子の姉さんは


犬に噛まれた尻が痛い。逃げよう、どんな手を使ってでも逃げてみせる。フゥ、緩んできた。このまま、もう少し。


・・・・・・ヨシ、解けた。



北のは甘いな。見張りは中と外、二人づつ置くモンだ。外に一人? オレなら犬に見張らせる。クッ、逃げられてヤンの。



笑いを堪えながら、腰を落として進むガガ。キョロキョロしながら狩り小屋を離れる。うっすら明るくなり、周りが見えるように。



「あの枝振り、違い無い。少し下れば、ソコにある。」



南から乗ってきた大きな舟ではなく、熊実で盗んだ小さな舟を引っ張り出す。痛む尻をかばいながら、えいさエッサと川辺へ。


脂汗を流しながら舟を下ろし、グッと押した。ギリギリで飛び乗り、スイィと漕ぎ出す。噛まれた尻が痛くて、痛すぎて気付かない。オカシイと。



釣り人の朝は早い、なのに一隻も。川にも湖にも、川辺にも見当たらない。なぜか。


忍びに頼んで、村を回ってもらったのだ。『捕まえた人攫いをワザと逃がして、隠れ家まで戻らせる。だから舟を出すのを、少し待ってほしい』と。






「こ・・・・・・は。」


どこ?


「ね、さん・・・・・・は。」



木の実を採りに、姉さんと山に入った。そしたらガザガサ音がして、男が三人。


囲まれて、逃げられなくて。アッという間に捕まった。バタバタ暴れたけど、私は小さくて。でも姉さんは落っことされて、気を失った。



山の中をグルグルして川に出て、舟に乗せられた時、気が付いたんだ。姉さん、凄く暴れた。それでも逃げられなくて。


私は木に縛りけられて、置いてかれた。『運ぶには少ない』とか『もっと集めるまで残す』とか『括り付けときゃ取られない』とか、言ってたな。



泣き疲れて、気を失ったみたい。気が付いたら、他の子と舟に乗せられていた。口に布を嚙まされて、手も足も縛られて。


川上に進んでいるのは分かった。けど、どこに向かってるのかはサッパリ。体が重くて、頭が痛くてボォっと。




「ここは茅野。助け出されたのは、三人よ。」


狩頭ヨシの妻、シノが伝える。



あぁ、そうか。助け出されて、それで。他の二人も、誰かと攫われたのかな。姉さん、どこに居るんだろう。会いたいな。


姉さんは賢くて強いから、逃げたと思う。だって舟だもん。川に飛び込んで、水から上がって、森に逃げ込んで。それで、それから・・・・・・。






「どうだい。」


「眠ったわ。この子、姉さんと攫われたって。」


「そうか。なぁシノ、その姉さん。」


「違うと思うわ。二人とも、まだ幼いもの。」



救い出されたのは、六つくらいの女の子が二人。八つくらいの男の子が一人。外に出るなら、大人が付き添うハズ。だから、この子の姉さんは。


考えたくない。けれど・・・・・・もう。



「そんな顔をするな。三人とも、一度ひとたびは起きたんだ。きっと助かる。」


「そうね。生きて、親の元に。」


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