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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
628/1583

8-112 なぜ人は


浅木は耶万やまに言った。『一隻に乗るだけ、食べ物を渡す。だから割符わりふを出せ』と。



耶万まで遠いし、冬も近い。浜まで運ぶダケで済むのは助かるが、光江はまったく信じられない。


ゴッソリ抜いて『これダケしか運び込まれてナイ』とか『入ったのはコレだけ』とか何とか、息をするように嘘をく。



ここまでハッキリ伝えたのにおみ、キキは出し渋った。耶万は変わったトカ、光江を信じたいトカ、グズグズだらだら。


浅木の使いは思った。『光江と組んで、ちょろまかす気だ』と。



浅木の使いは溜息を吐きながら、『割符を出さないなら浅木も早稲わさも、決して食べ物を出さない』と言った。






「で、どっち。 耶万、それとも光江?」


ヒサがヒトに問いかけた。


「光江だ。食べ物を渡せば、光江の割符が手に入る。」


「ヨシ!」


カツたち、大喜び。



人攫いが持っていた割符と、食べ物と引き換えに受け取った割符が同じ作りなら、合わなくてもあかしになる。



明日にでも漕ぎ出し、子らを釜戸山へ。やしろの誰かに託し、伝えよう。


釜戸の裁きは、直ぐには始まらない。見た者、聞いた者、証が揃っていても、しっかり調べる。



兎原うさはらから攫われたオリは、親が迎えに来るだろう。しづめの三人は受け入れ先が決まるまで、釜戸山に留まる。


『戻りたくない』って言ってるんだ。暮らしやすい里とか村、国に引き取られるだろう。



この辺りで起こった事、見た事や聞いた事。隠さず全て話せば、冬が来る前に戻れるハズ。



割符は調べるから渡せないが、他は渡す。


釜戸社かまどのやしろから調べに来る頃には、光江の割符も早稲に有るだろう。里人が見つけた品は浅木に有るんだ。必ず来る。



「子らにはセイから、オレは舟を調べる。ヌエはシギに頼んでくれ。社から伝えられるなら『早稲から釜戸山へ行くから、よろしく』と。ヒトはもう一度ひとたび、みんな村に居るか調べてほしい。」


「分かった。」






「ごめんください。早稲神わさのかみの使わしめ、さねです。」


「はい、ただいま。」


大貝神おおかいのかみの使わしめ、土。カサカサッと、お出迎え。



そうですか。そんな恐ろしいコトが、大貝山の統べる地で。・・・・・・ハァ。なぜ人は、人を物のように扱うのでしょう。サッパリ解りません。



四人の子のうち、一人は親元へ戻れるでしょう。残り三人は聞く限り、霧雲山の統べる地で暮らす方が幸せでしょうね。



多くの質が死んだのに、なぜ生き残れたのか。ウチの子は戻らないのに、なぜ戻れたのか。口から出なくても伝わります。


辛く恐ろしい思いをしたのに。


ヒビが入った心が、粉粉こなごなに砕けてしまう。



「大貝山も霧雲山も閉ざされました。けれど大蛇神おろちのかみの使いなら、きっと。」


「良かった。」



お任せください、急ぎ伝えます。嫌呂きろろがネ。



もし断られれば、大貝山の統べる地の端まで行き、お願いするより他ありません。幾ら妖狐でも、それはツライ。


鎮の西国にしくにと中の東国ひがしくには、遠く離れています。同じ中つ国でも、国と国との話し合い。乱雲山が動きますヨ!


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