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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
624/1585

8-108 贈り物、何にする?


「末永く、よろしく。」


中主なす里長さとおさ、ツク。


「こちらこそ、よろしく。」


菜生なせの里長、サオ。


「助け合い、里を守りましょう。」


中多なたの里長、カロ。



中主、菜生、中多。三つの隠れ里が同盟を結んだ。子を幾人いくびとも攫われた事により、結ばなければ守れないと思い至る。


見つかった子は、合わせて五人。皆、戦好いくさずきで知られる早稲わさに。それも早稲の『他所よその』人に救われた。



早稲のおさせがれジン、他所の人タツ。三人は釜戸の裁きを受け、死んだ。


新しい長ヒトも大臣おおおみヌエも、死んだ長の倅。荒れた早稲を立て直したセイは、死んだ長の娘らしい。



他所の人の多くが、早稲を出た。たった一人、残ったのがカツ。


ヌエとカツは何か仕出かし、釜戸かまどの裁きを受けた。戻った二人は心を入れ替え、真っとうに生きている。・・・・・・ような気がする。



早稲に頼るのは良くない。カツにも言われた。早稲から仕掛ける事はナイが、攻められる前に戦う。風見かぜみと組んでいるとも。



早稲も風見も、戦好きで強い。戦い慣れている。つまり組めば、早稲や風見のために戦う事に。


決して受け入れられない。ならばドウする。隠れ里が村や国、大国おおくにと渡り合えるのか?




「で、アレだ。」


中多のカロ、モジモジ。


「ん? ドレだ。」


中主のツク、パチクリ。


「贈り物、何にする?」


言いにくそうなカロに代わって、サオが切り出した。




中主も菜生も中多も、豊かとはいえ隠れ里。多く蓄えているワケではナイ。早稲は国に出来るくらい、大きくて豊かな村。つまりタンマリ、蓄えている。


宝である子を救い出し、力を尽くしてくれたんだ。それも怯えないように、優しく。



攫われた子が隠されていたのは、狭くて暗くてジメジメした、小汚こぎたない掘っ立て小屋。


中主の子は二度ふたたび、救われている。そのうえ人攫いを片付け、あかしを奪い、残してくれた。




「・・・・・・蜂蜜は、どうだ。」


ツクがポツリ。


「良いと思う。」


「うん、良い品だ。」


サオとカロが、大きく頷く。



中主、菜生、中多を繋いだ真ん中に、蜜蜂の巣がある。長持ちして美味おいしいので、冬を越すのに良い品だ。湯に入れて飲めば温まるし、体にも良い。



「では持ち寄って、壺に入れよう。」


「その、大きさは。」


カロが言い難そうに、ツクに問う。


「塩が入っていた壺だ。」


大きさは、大人のこぶしくらい。




子が生きて戻ってくるんだ、惜しくない。けれど蜂蜜は、冬を越すために要る品だ。


子は直ぐ弱る。熱を出したりせきをしたり、やまいが重くなりやすい。そうなる前に、湯に溶いた蜂蜜を飲ませる。




「そうか、分かった。」


カロもサオも、ホッ。


「明日の朝、岩割の木に集まろう。」


苦笑いしながら、ツクが言った。


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