8-108 贈り物、何にする?
「末永く、よろしく。」
中主の里長、ツク。
「こちらこそ、よろしく。」
菜生の里長、サオ。
「助け合い、里を守りましょう。」
中多の里長、カロ。
中主、菜生、中多。三つの隠れ里が同盟を結んだ。子を幾人も攫われた事により、結ばなければ守れないと思い至る。
見つかった子は、合わせて五人。皆、戦好きで知られる早稲に。それも早稲の『他所の』人に救われた。
早稲の長、倅ジン、他所の人タツ。三人は釜戸の裁きを受け、死んだ。
新しい長ヒトも大臣ヌエも、死んだ長の倅。荒れた早稲を立て直したセイは、死んだ長の娘らしい。
他所の人の多くが、早稲を出た。たった一人、残ったのがカツ。
ヌエとカツは何か仕出かし、釜戸の裁きを受けた。戻った二人は心を入れ替え、真っ当に生きている。・・・・・・ような気がする。
早稲に頼るのは良くない。カツにも言われた。早稲から仕掛ける事はナイが、攻められる前に戦う。風見と組んでいるとも。
早稲も風見も、戦好きで強い。戦い慣れている。つまり組めば、早稲や風見のために戦う事に。
決して受け入れられない。ならばドウする。隠れ里が村や国、大国と渡り合えるのか?
「で、アレだ。」
中多のカロ、モジモジ。
「ん? ドレだ。」
中主のツク、パチクリ。
「贈り物、何にする?」
言いにくそうなカロに代わって、サオが切り出した。
中主も菜生も中多も、豊かとはいえ隠れ里。多く蓄えているワケではナイ。早稲は国に出来るくらい、大きくて豊かな村。つまりタンマリ、蓄えている。
宝である子を救い出し、力を尽くしてくれたんだ。それも怯えないように、優しく。
攫われた子が隠されていたのは、狭くて暗くてジメジメした、小汚い掘っ立て小屋。
中主の子は二度、救われている。そのうえ人攫いを片付け、証を奪い、残してくれた。
「・・・・・・蜂蜜は、どうだ。」
ツクがポツリ。
「良いと思う。」
「うん、良い品だ。」
サオとカロが、大きく頷く。
中主、菜生、中多を繋いだ真ん中に、蜜蜂の巣がある。長持ちして美味しいので、冬を越すのに良い品だ。湯に入れて飲めば温まるし、体にも良い。
「では持ち寄って、壺に入れよう。」
「その、大きさは。」
カロが言い難そうに、ツクに問う。
「塩が入っていた壺だ。」
大きさは、大人の拳くらい。
子が生きて戻ってくるんだ、惜しくない。けれど蜂蜜は、冬を越すために要る品だ。
子は直ぐ弱る。熱を出したり咳をしたり、病が重くなりやすい。そうなる前に、湯に溶いた蜂蜜を飲ませる。
「そうか、分かった。」
カロもサオも、ホッ。
「明日の朝、岩割の木に集まろう。」
苦笑いしながら、ツクが言った。