8-107 よく考えよう
「オレたち、隠れ里の子なんだ。」
中多の長の倅、オロ。
「オレたちは兄妹。」
菜生の長の倅、サロ。隣にサナ。
「違う里だよ。」
中多の狩頭の倅、ロロ。
四人とも同じだ。木の実を採りに森に入り、親と離れた所を狙われ、大野に攫われた。
早稲 近くの掘っ立て小屋から救い出され、迎えを待っている。
「オレも隠れ里。ずっと北にある、矢羽の子さ。」
狩り人の倅、オリ。胸を張り、ニコリ。
「オレも里の子。中主だよって、知ってるか。」
長の倅、シン。おどけてニコリ。
シンを攫ったのは、大野のカズ。狡賢く、そこそこ口が堅い。オリを攫ったのは、大野のガガ。口が軽く、オリの問いにスラスラ答えた。
幾ら聞き出すのが上手くても、兎原から早稲に着くまでの長い間、ペラペラと喋り続けるのはドウなんだ?
オリは矢羽の、狩り人の子。里を守るために、生きて戻る術を叩き込まれている。
攫われた時も『攫われた』と知らせるため、親から貰った弓を、迷わず真っ二つに折った。
捕まったら逃げるまでに、顔や持ち物を覚える。それから従うフリをして、要る事をイロイロ聞き出す。
子が狩りに出る時は、必ず三人。逃げる時は三つに分かれて、遣り過ごしてから木に登って、助けが来るまで待つ。それが隠れ里、矢羽の決まり。
「い、え、ない。」
ブルブル震えるココとミアを守るように、グッと前に出て、カセが思い悩みながら言った。
「そっか。西国の事は知らない。けど、早稲に残るのは良くない。カンだけど、そう思う。」
オリが言い切った。
「もし質とかなら、マズイかも。」
シンがポツリ。
オリは人攫いからイロイロ聞き出し、知った。鎮の西国の子を、他から攫ったと。考えられるのは耶万。
大王が死んだって聞いたけど、嘘か真か確かめられない。もし王が変わっていたら、質を戻すと思う。『ごめんなさい』って。
死んだなら戻せないけど、三人も生き残った。『知らなかった』なんて言っても、信じてもらえない。そうなれば、戦が始まっちゃう。
「オレと釜戸山に行って、全て話そう。釜戸の祝は、とっても偉いんだ。他との話し合いだから、乱雲山だね。きっと祝の力で、話を通してくださる。」
ニッコリして、オリ。
「それがイイよ。君たちが話したくないなら、オレから話そう。どうする?」
シンもニッコリ。
どうするって、どうしよう。考えろ! ココもミアも姫さまだ。オレは兵頭の子、シッカリしなきゃ。
聞く限り、早稲は戦好き。風見と組んで、耶万に睨みを利かせている。と、思う。
釜戸山とか乱雲山とか、よく分からない。けど、強い祝が居るのは確かだ。祝ってガッチガチに守られるから、会いたくても会えない。近づけない。
ん。オリと釜戸山へ行けば、祝に助けてもらえる? でもなぁ・・・・・・。
「いろいろ聞いてから、話し合って決めるよ。」
カセが答えて、微笑んだ。