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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
62/1616

4-16 怒り、爆発!

「すべて、違いないか。」


鷲の目は、野呂の祝に仕える、野呂の村の人。そして、祝辺の守の使い。決して、嘘ではない。わかっている。


「はい、違いありません。霧雲山の、祝辺の守の使いとして、釜戸社の祝へ。嘘、偽りなく、見たまま、聞いたまま、確かめたこと、包み隠さず、申し上げ、控えております。」


力強く、短く区切って言う。怒っているわけではない。そう言うのだ。木菟も、谷河の狩り人も。鷲の目だけではない。


「ここは釜戸社。霧雲山? 祝辺の守の使い? それが何だ。黙れ。」


ビリビリィッと、何かが走った。


「川北の国の長よ、口を慎め。」


ビクッとした。一人残らず。


「釜戸社の祝。霧雲山、祝辺の守からの使い。釜戸神に誓って、信じる。」


犬がベタッと伏せた。


「信じようが、どうしようが、構わん。祝、諦めろ。」


「何を。」


「川北が決めたことは、何があっても従う。そういう決まりだ。」


「川北の長よ、なぜ来た。」


「なぜ? またか。」


「答えよ。」


「大甕湖は川北の国のモノ。その許しを、出させに来た。わかったか。」


「許さぬ。」


「フンッ、子が何を言う。」


「なぜ来た。」


「なぜ、なぜ。ワシは忙しい。さっさと認めろ。大甕湖は、川北の国のモノ。」


「断る。大甕湖は、いや、川も、山も、湖も、皆のもの。欲張るな。」


グラグラと揺れた。噴き出すのか? 釜戸山が!



「静まれ、噴き出さぬ。」


エイの声が響いた。


「今は、噴き出さぬ。」


静かに、エイの声が震えた。



「そうか、脅す気か。」


偉そうにしているが、震えてるぞ。川北の長よ。


「川北にも、釜戸山の灰が降る。釜戸社の祝が決め、定めたこと、必ず従う。違う考えを述べたり、逆らうことは許されない。」


水を一口。あぁ、怒っている、なんてモンじゃない。


「鷲の目。いや、祝辺の守に、何を言った。答えよ。」


「な、にも。祝辺の守? いるのか、いないだろう。そんなモノ、いない。」


モノ?




「申し上げます。」


鷲の目が、怒りを堪えるように言った。


「霧雲山の頂き。祝辺へ行けば、守に会うことも、話すことも出来ます。祝辺の守は、確かにおられます。その力に溺れることなく、霧雲山を守り、皆を導く。そういうお方です。恐れ多くも、モノなどと。」


お怒りです。そりゃそうだ。私だって、エイさまをモノ呼ばわりされれば、怒り狂う。


「しっ、しかっ、しぃ。」


鷲の目に睨まれ、オロオロしている。


「霧雲山の、誰か一人でも傷つければ、どうなるか。わかるか、川北の長。」


・・・・・・。


「守のな、一声。たった、それだけ。で、決まる。」


ガタガタ、ブルブル。わかりやすく怯えだした。


「私とて、同じ。もし、釜戸山の誰か。一人でも、傷つけられれば。」


「き、傷つけ?られれば。」


「動く。手に余るようなら、霧雲山へ使いを出す。」


「ハハッ、頼るのか? 情けない。」


「よく考えよ。他の村は、人は、何かあれば、釜戸山に来る。釜戸社を頼る。では、釜戸社は。」


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