8-101 考えるコトは、同じ
耶万の祝だったタヤは妖怪に堕ちる。
優しく、良い祝だったタヤは二度、殺された。王や臣、社の者から。穢され嬲られ弄ばれ、憎しみを抱きながら死んだ。
一度でも抱けば、決して消えない。
許す気は無い、忘れられない。消えない憎しみに引き摺られ、抑えられない殺気、狂気を剥き出しにして、残らず嬲り殺した。なのに、心が晴れない。
残らず殺したのに。
復讐を果たしたタヤは、中つ国と根の国の境を彷徨い、洞穴を見つけた。そこに根城を構え、決意する。腐りきった耶万を叩き直すと。
ムクムク溢れる怨みの念いから生まれた、蛇の妖怪。求められるまま『念珠』と名を。共に暮らすうち心が通じ合い、無くてはならない存在に。
耶万の男は、女を人として扱わない。
耳を塞いでも、泣き叫ぶ声が聞こえる。殺しても殺しても、ヒトデナシが湧いて出る。
このままでは、苦しむ女が増えるダケ。誰も助けてクレナイ、神も助けてクレナイ。だったら、私がヤルしか無い。けれど叶わなかった。
大貝山の統べる地ごと、大祓により祓い清められる。
隠れ家は清められ、真中に霊屋が建てられた。タヤと念珠の魂は清められ、消えて無くなった。しかし、その思いは残っている。
全ての人が幸せに。飢えず凍えず怯えず、笑って暮らせる国にしよう。
耶万は変わる、変われる。
死んだ人は戻らない。けれど、滅んだ国は興せる。だから共に立て直し、守ろうと。
「耶万神。死んだ王の家から、儺国の剣が出たコト。大貝神に御伝えしましたか?」
・・・・・・!
「あ、あの。」
耶万神の使わしめ、黒蛇なのに真っ青。
「マノ。大貝社へ行って、確かめておくれ。」
死んだ耶万王の家は、焼け落ちました。
話し合いにより、刈り入れが済んでから片付けるコトに。その焼け跡で、大蛇神の使い狐が見つけたのです。
良く良く確かめてから、耶万社に運び込まれました。
大貝神に御願い申し上げ、二柱でスミズミまで調べました。
地蜘蛛の大妖怪、土の糸でグルグル巻きにし、耶万社でシッカリ守っております。というワケで、和山社へは大貝神からと。
なんて言い訳、通ると御思いで?
「それは分からない。けれど、確かめよう。伝え忘れて御出でなら、困ったコトにネ。」
耶万神。御目を泳がせ、ニッコリ。
「大貝神。耶万の死んだ王の家から、危ないモノが出たコト。一山の隠神に・・・・・・。」
「つ、土。耶万社へ行って、確かめておくれ。」
耶万から、闇食らいの剣が出たと使いが。駆けつけ、二柱でスミズミまで調べましたヨ。
闇を纏ってナイと分かりましたが、地蜘蛛の糸で巻きました。闇を弾く糸です。
剣は耶万社に。というワケで、和山社へは耶万神からと。なんて言い訳、通ると御思いで?
「それは分からない。けれど・・・・・・。」
「いらっしゃいましたね、マノさま。」
「フム。考えるコトは同じか。」
土とマノは急ぐ。大蛇神の使い狐、嫌呂と悪鬼の元へ。隠の世は閉ざされ、入れませんからネ。