8-100 隠れ家の再利用
中つ国に存在する、不思議アイテム。
三種の神器、打ち出の小槌、聞き耳頭巾など、イロイロ御座います。その中の一つが、闇食らいの剣。別名、叢闇剣。
海を越え、やまと上陸。鎮の西国を転転とした後、儺国の大王の手に。
耶万との戦に敗れ、中の東国へ。それからは食らい放題。
濃く深い闇にドップリ浸り、グングン吸い込みポヨンポヨン。戦を好む耶万の大王を操り、ぶんぶんエクササイズ。苦も無く、我儘ボディがシュッとした。
大貝山の統べる地で執り行われた大祓の儀で、剣の芯まで祓い清められピッカピカ。生命力、馬力ともに大赤字。逆さに振られても、鼻血も出ない。
「幾ら守られているとはいえ、そのようなモノ。耶万に据え置くのは、危ういのでは。」
一山の治めの隠、鳶神。クワッ。
「大貝山に、神倉を建てるか。」
ポツリと、大蛇神。
「津久間の神倉には弓、一山の神倉には矢。どちらも人の世からは、決して入れません。けれど大貝山は。」
言い難そうに、鵟神。
「人の世からは、決して入れず。」
「人に暴かれず。」
「人と闇を、遠ざける地。」
・・・・・・。
隠の神倉に入れるのは、隠の世に御坐す隠神だけ。近づけるのは、許し札を授けられた使い隠。人はモチロン、国つ神にも近づけない。
そんなトコロに入れられる代物が、心躍る品であるワケがナイ。どの不思議アイテムも人を狂わせ、人の世を乱すモノ。
「やまとの品は、やまとに隠す。けれど、叢闇の名を持つ品は。」
全て、海を渡ったモノ。
「大蛇神。もしや、他にも。」
『お願い、違うと言って』という御顔で、梟神。
「闇食らいの鏡、叢闇鏡。闇食らいの珠、叢闇珠。何れも、鎮の西国に入った。」
何てコッタイ!
「叢闇鏡は、鎮の西国。対国に。」
そう仰ると、特別席からポタッと落下。フラフラと席に戻られた、竪羅山の治めの隠、蝙蝠神。
「叢闇珠は、鎮の西国。岐国に。」
荷馬車に乗せられた仔牛のような目で、岳辻の治めの隠、牛神。
生命力の塊である黒いカサカサなら、燻煙剤で防除できる。どちらも同じ、忌み嫌われる存在。にも拘わらず、全く効かない。
アレは生き物だが、鏡も珠もモノだろうって? その通り。しかし叢闇の品には『闇を食らい、禍を齎す』という、意志が有るのです。
「耶万社の下には、中つ国と根の国の境がある。その近くに、タヤと念珠が暮らした穴が。」
闇が動けば判る場所を、思い出された鳶神。
「あそこなら、人は入れぬ。」
和山社に集いし隠神、揃ってウンウン。
「大貝山に埋めるより、良かろう。」
剣は妖糸に巻かれたまま、耶万に隠されるコトに。地蜘蛛の詰所もあり、安全です。