8-99 有り難いコトだよ
朔の日。隠の世、和山社。議りが始まるまで、ワイワイ。
「では、はじめよう。」
はじまりの隠神。堂堂、開会宣言。
「鎮の西国、人の世。多くの命を奪ったバケモノが、響灘を渡った事により、落ち着きました。」
郡山の治めの隠、猫神。ニッコリ。
「天つ国と根の国の許し無く、執り行われた大祓の儀により、数多の国つ神が御隠れに。」
竪羅山の治めの隠、蝙蝠神。特別席より、ブラリ。
鎮の西国で生まれた、人と妖怪の合いの子。その多くは、アンナとマリィにモグモグされた。その後、敗れてパクリんこ。腹の中で融合し、肉体の乗っ取りに成功。
より強い力を求め、合いの子に加え祝など、強い力を持つ人もバクバク食べた。結果、魔物を食らった個体は進化し、強大な力を得る。
「そのバケモノが、中の西国に入ったと。」
溜息混じりに、大蛇神。
「はい。」
因幡の治めの隠、兎神。大国主神の使わしめ、稻羽の父である。
大祓を滞りなく終えるには、天つ国と根の国。天と地の許しが要る。
許し無く執り行い、数多の神が御隠れ遊ばした。このままではイケナイ。焦り慌てふためいて、杵築大社へ使いを。
大国主神は沈思なさる。で、あろうことか『新妻を』と御考え遊ばし、宣言。
使わしめのハイキックと、正妻のビンタが炸裂。ボッコボコ。泣きながら平伏し、赦しを請うたトカ何とか。
天つ国と根の国へは、須勢理毘売が。隠の世へは木俣神が、御願い申し上げる。
「大祓の儀について。『天つ国と根の国より御許しを得られた後、また御越しください』と、木俣神に御伝えしました。」
畏れ山の治めの隠、狐神。因みに、御伝えしたのは使い隠、ピィロです。
「妻、子、兎に、労りの言の葉は。」
筋さえ通せば、人の世へ力添えを。しかし、その前に。
「それは・・・・・・。」
狐神、尾をギュッ。兎神、後足をタシタシ。
有り難いと思って貰わねば!
須勢理毘売は、素戔嗚尊の娘。伊弉諾尊の孫娘。
父と伯母を頼り、天つ国と根の国からの力添えを願った。先妻をビビらせ、子を残して実家に帰らせた嫉妬深さは、イタダケナイが・・・・・・。
木俣神は大国主神と、八上比売の御子。
使わしめ白兎は元、兎神の使い隠。子を思う母、八上比売の思いに心を動かされ、因幡から遣わされたのだ。
大国主神の使わしめ稻羽は、八上比売の使い兎だった。命の恩神、大穴牟遲神にお仕えしたい。そう願い出雲に残った、忠義を尽くす兎である。
「魔を乗っ取った、アンリエヌの魔物。中の西国から東国に入るのを諦め、海に出ました。」
津久間の治めの隠、鵟神。
「耶万に滅ぼされた国で食らい、力をタップリ蓄えてから、霧雲山を目指すようです。」
一山の治めの隠、鳶神。
「耶万で、見つかったそうだな。鎮の西国から奪われた、闇を纏う剣が。」
「はい。大貝神の使わしめ、土の糸により、守られております。」
大蛇神に問われ、鳶神。キリリ。