8-98 とっても大事よ、報連相
「見て見て、わっるい顔。」
悪鬼が嫌呂に話しかける。
「わぁぁ。悪意と同じだ、あの目。」
・・・・・・。
「思い出しますねぇ。」
「忘れたいよ。」
軽く落ち込むコンコンず。見合い頷き、ゲッソリ。話し合いの末、嫌呂が一山に伝えに行くコトに。
「なんと。」
一山に御坐す治めの隠、鳶神。ビックリ!
「人の世では、そのように。」
大蛇神の使い、嫌呂。ニコッ。
「で、その剣。今はドコに。」
「耶万社に、隠して御座います。」
第一発見者、嫌呂は語る。剣が見つかってから、社に安置されるまでの一部始終を。
先代、耶万王の館は焼け落ちたまま。社の横に立てられた家で、政が行われている。もともと刈り入れの後、片付けると決まっていたのだ。
天気も良いし、チャッチャと済ませよう。
嬰児を幼子に任せ、動ける者がセッセと働いた。すると、何かがピッカァン。直ぐに人を遠ざけ、妖怪の術で取り出しツンツン。
闇を纏っていたと思われるソレは、大祓の儀によりピッカピカ。ドコにでも有りそうな、大きいダケの古い剣に。とはいえアブナイ。
鎮の西国、儺国から奪ったという剣。見たコトは無くても、多くの人が聞いて、知っていた。だから社に隠し、神にお任せしようと。
耶万神は急ぎ、大貝社へ使いを出し為さる。『一度、闇を纏った剣が見つかりました』と、大貝神に御伝えするために。
耶万社にて二柱。スミズミまで御調べ遊ばしたが、何の力も感じられなかった。しかし念のため土の糸で、剣をグルグル巻きに。
大貝神の使わしめ、土は地蜘蛛の大妖怪。その糸には、闇を遠ざける力が有る。闇堕ちした祝にも切れなかった一級品。
百妖乗っても、ガンガン引っ張り合っても大丈夫!
人の目には見えない。祝の力が有っても見えない、蜘蛛の糸に包まれた剣である。とんでもなく強い闇を纏った神が、御手に取られない限り、ビクともしない。
剣が見つかったのは昨日。
なのにナゼ、隠神は御存知ないのか。そうです。耶万神も大貝神も、報告するのを忘れてました。
イケナイんだぁ。報告・連絡・相談、略して報連相。とっても大事だゾ! 忘れないで。
「・・・・・・ハァ。」
やまと隠の世は全て、閉ざされている。しかし緊急連絡用に、和山社の許し札を持たされている狐が。
御存知、嫌呂と悪鬼。
一山から隠の世に入って、鳶神に報告。それから特別仕様の輿に乗り、和山社へ。この度は、嫌呂がモフッと参りました。
はじまりの隠神で在らせられる蛇神、大蛇は御機嫌ナナメ。愛し子マルと楽しく過ごしていたのに、お呼び出し。
そりゃ、溜息くらい吐くよ。